育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

馬における運動誘発性肺出血:北米大学獣医内科によるコンセンサスステートメント⑦ 考察と勧告(Hinchcliffら2015)

EIPHが馬に与える影響について、これまでに行われた調査をワーキンググループが精査してエビデンスを評価したものが公開されています。

 

 

 

EIPHについて考察と勧告

コンセンサスのパネルから言えることは

競走馬において肺の病変が存在することは鼻出血や繰り返しEIPHと診断されることと関連があるという質の高いエビデンスがある。

鼻出血を除くEIPHは馬の健康や福祉に影響はないという質の低いエビデンスがある。

EIPHの症例に肺の病変が存在することから、EIPHは疾患と考えるべきで、馬において激しい運動で見られる正常な結果ではないことを強く推奨する。

この疾患が進行性のものであるというエビデンスの質は低いが、さらなる調査が必要であることを認識した上で、EIPHは進行性疾患と考えるべきだという弱い勧告を行うに足りる。

 

EIPHの予防にフロセミドは効果的であるという質の高いエビデンスがあり、この疾患のある競走馬の管理に使用することを弱く推奨する。なぜ弱いかというと、競走馬にフロセミドを使用することは競馬統括機関によっては制限されており、有効性に限らず幅広い要素を考慮しなければならず、使用に関するポリシーやフロセミドによる予防の必要性に関して、ステークホルダーとの更なる議論を続ける必要があるからである。

 

EIPHの予防に使われる他の薬剤については調査がないか質が低いために推奨できるものはない。

 

EIPHの予防方法の有効性を検証しようとした調査は多くあるが、調査の詳細が十分に報告されておらず、エビデンスの質を完全に評価することができず、頭数が少なく、トレッドミル(競馬との関連性がわかっていない)を用いて行われ、用量反応関係を評価していないため、タイプ2のエラーが高確率で見られた。パネルにとっての懸念は、負の結果となった数多くの研究(例えば介入の有効性を見つけられなかった研究)であるが、それらは十分な頭数を確立したり、結果の解釈のための統計学的パワーを考慮したりするのに演繹的な手法をとっていなかった。統計学的パワーが不十分なある調査において、介入の効果が検出できなかったことは、効果がないことが示されたことと同じではない。

 

中程度から重度のEIPHはサラブレッド競走馬において運動能力の低下と関連しているという中程度の質のエビデンスがあった。

 

サラブレッドやスタンダードブレッド競走馬において、フロセミド投与がパフォーマンス改善と関連しているという質の高いエビデンスが示された。

 

 

北米の獣医大学の内科学の著名な先生が作成した運動誘発性肺出血EIPHについての合意声明がJVIMに掲載されています。これはOpen Accessで誰でも読むことができます。

 

 

 

 

www.ncbi.nlm.nih.gov