IBD罹患馬の臨床的および診断的評価
多くの臨床家によってIBDの明確な診断ガイドラインが腫脹されたが、筆者の意見では、臨床検査は段階的に進めていくべきで、侵襲の小さい検査から始め、侵襲の大きい検査に進むべきである。IBDは非特異的な臨床症状が特徴で、診断的検査のすべてで大きくバラついた結果がでるため、たいていは他の疾患やよくある原因を除外することで診断がなりたつ。
以下にIBDが疑われる症例に対する診断のフローチャートを示し、これは侵襲が小さい順に並んでいる。
第1段階
①食事を確認する
歯の異常、消化管寄生虫の関与を除外する
②身体検査(直腸検査を含む)
皮膚の病変、腹部および四肢の浮腫を確認
③血液検査
感染症、肝臓および腎臓の疾患を除外する。
貧血 特にGEの症例で慢性的な疾患であり、造血にかかわる要素の吸収不全によって生じる
低タンパク血症、低アルブミン血症はよくみられる
肝酵素の上昇は、MEEDで肝臓に病変があるときにみられる
第2段階
①経腹部超音波検査
小腸壁の肥厚がときどきみられる
リンパ節腫脹がまれにみられる
②腹腔穿刺
IBD症例ではたいてい正常の滲出液
腹膜炎、腹腔内新生物または膿瘍があると腹水性状が変化する
第3段階
①吸収試験
小腸のびまん性浸潤性疾患では、吸収が低下する
②非侵襲的な生検検体の病理組織学的検査
炎症性細胞浸潤
分節的な病態では有用ではない
結果の解釈が標準化されていないことに限界がある
第4段階
腹腔鏡または開腹手術
腸管の全層生検検体を得るために行う
腹腔内腫瘤の存在を確定または除外するにも役立つ
第2段階
経腹部超音波検査
超音波検査で肥厚した小腸のループが見えることと、直腸検査で触れることの関連は報告されてきた。直腸検査で触れるのは腹腔尾側の領域のみであるが、超音波検査は非侵襲的でより詳細な消化管の検査が可能である。さらに言えば直腸生検の結果がIBDと一致する症例では、超音波検査で小腸の肥厚が確認されることがある。正常な小腸壁の厚さは2−4 mm程度である。まれに、腹部超音波検査ではリンパ節の腫脹がみられることがある。さらに、超音波検査では腹水貯留や腹腔内腫瘤が検出でき、肝臓、脾臓および腎臓といった他の腹腔内臓器の評価にも有用である。
腹腔穿刺
疝痛症例で低タンパク血症がある場合、腹腔穿刺を行うべきで、絞扼性病変、腹膜炎、腹腔内膿瘍および新生物を除外するために行う。ほとんどのIBD症例において、腹水の細胞診は正常な滲出性液であるが、好酸球増加はいくつかの好酸球性腸炎症例ではみられることがある。
参考文献
Inflammatory bowel diseases in horses: What do we know?
V. Vitale
Equine Veterinary Education 2022 34(9) 493-500
https://beva.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/eve.13537