第一指骨/趾骨(P1)の矢状骨折はさまざまなタイプに分類されていて、古い文献のため矢状骨折の長さの分類は最近のものとは異なっています。
矢状骨折は、短い不完全骨折が骨体の半分以下、長い不完全骨折が骨体の半分以上および完全骨折に分類されています。
骨体の半分以下の骨折線は119頭中61頭で、前肢47頭、後肢15頭(1頭は両側で発症)、2歳が41頭(オス23頭、メス18頭)、3歳が16頭(オス9頭、メス7頭)、4歳以上が3頭、不明1頭。1頭を除くほとんどの症例で保存療法が選択され、その後36頭が出走しました。
骨折線が骨体の半分以下で保存療法を選択した症例は、2ヶ月程度で跛行や疼痛が消失しますが、X線画像上では骨折線が残り、特に関節面近くでは明らかなことが多いのですが、調査した先生の経験上、徐々に安全に運動を再開することができると報告しています。しかしながらある程度の長さの骨折線は治癒に時間がかかることが多く、内固定を行うことで早期の治癒が可能になること、関節炎の進行も抑制することができることも述べられています。
P1矢状骨折の治療選択
2000年代にはP1の不完全骨折の多くは螺子固定されるようになり、より良好な競走復帰が可能になってきました。
より短い不完全骨折に対しても手術を選択すべき?
近年では、短い骨折線の不完全骨折は関節面から2〜3cmと定義されるようになりました。そのような短い骨折の場合でも、治癒を早めて再骨折や関節炎による跛行を起こさせないために内固定を推奨するグループが増えてきています。
内固定手術のメリットは前述の通り大きいですが、保存療法を選択した場合にも競走復帰の予後は良好です。
短い不完全骨折は、より長い矢状骨折に先行して起きている可能性があることにも言及されています。長い矢状骨折の症例のなかには、背側皮質骨に仮骨が形成されていました。短い不完全骨折の治癒過程で仮骨が形成されることがわかっており、これが先行して起きていることを示唆していると考えられています。
紹介した文献
119頭のP1骨折症例の回顧的調査。短い不完全矢状骨折は最も多く、保存療法により競走復帰の予後は良好であった。長い不完全矢状骨折も予後は良好であったが、完全骨折は外側皮質骨に抜けるか、近位指節間関節に抜けるもので、内固定が必要であった。術前に完全骨折や骨片の粉砕は慎重に評価することが不可欠である。粉砕骨折の場合はほとんどが競走復帰よりも繁殖を目的に治療された。オスやセン馬でこのような骨折の症例は、繁殖的価値がないまたは粉砕が重度な場合は安楽死も考慮される。
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