育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

大腿骨内側顆のボーンシストに対する搔爬術(Whiteら1988)

1988年にまとめられた報告では、ボーンシストに対して関節切開による病変部の搔爬術が行われていました。術創に関するトラブルは思ったほど少なく、跛行の改善が得られる治療法として報告されました。

 

この報告においても、病変部の搔爬術後に病変部のX線所見が消失することはほとんどなかったものの、この病変の程度とその後の歩様や運動への予後には関連がなかったことがわかっています。

 

病変を搔爬することによる疼痛も関連しているのかもしれませんが、術後の疼痛は比較的長く継続し、跛行も持続することが分かっています。この調査においても、ほとんどの症例において術後の跛行は3−6ヶ月間持続したと記載されていますが、その後もリハビリテーションを続けると8−12ヶ月ではほとんどの症例で跛行は軽減または消失したと記録されています。

リハビリテーションは症例の状態を評価しながら進めていますが、目安としては術後10日間舎飼い、その後2ヶ月間は5分程度の引き運動、続いてパドック放牧も組み合わせ、経過が良好であれば騎乗運動を始めたとされています。症例次第なところが大きいようで、騎乗再開後の具体的な運動メニューについては記載がありませんでした。

 

 

参考文献

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

51頭の馬に対して大腿骨内側顆の関節切開によるボーンシストの搔爬術を行った。合計で60のシストを手術した。術後3−12ヶ月で手術に反応した。42頭で跛行が改善または消失し、元の運動または意図した運動に復帰した。42頭のうち35頭は跛行がなく、4頭は運動が再開できておらず、7頭は部分的に改善、2頭は長期フォローができなかった。9頭中2頭は跛行の改善がなく、7頭は長期フォローができなかった。関節切開による手術は全体の82%、フォローアップできた95%(42/44)の症例で跛行の改善または消失に成功した。関節切開によりボーンシストを搔爬することは、様々な運動を行う馬において満足できる治療法である事が明らかとなった。