膝関節における大腿骨滑車のOCD病変は、この関節で最も多く見られるOCD所見です。
症状がない場合もありますが、いったんOCDによる関節炎や跛行を呈してしまうと、手術後にも症状がなかなか改善せず、予後が良くないこともあります。
しかし、骨軟骨症は運動制限を中心とした保存療法を早期に選択することにより、治癒して所見が解消する可能性があり、この病態を早期に発見することで予後を改善できる期待が持たれています。
骨軟骨症の病態が形成される初期段階は、かなり若い日齢の変化から始まることがわかっていて、それを超音波検査で検出できないか検証されました。
サラブレッド子馬を①2ヶ月齢まで、②2から4ヶ月齢まで、③4から5.5ヶ月齢までに分けて、キシラジンとブトルファノールで鎮静し、膝関節の超音波検査とX線検査が行われました。
この年齢の子馬では、大腿骨滑車部分の超音波検査において軟骨内骨化が起きる部分の軟骨が低輝度領域として見られ、これが成長とともに骨組織に置き換わっていく様子が観察できました。一方でOCの初期病変として骨化部分のラインが凹んだり波打ったりすることが特徴として検出され、軟骨内骨化のバリエーションと病的な所見とを区別することが可能でした。
検出されたOCはいずれも無症状であり、その後の1歳時以降のX線検査ではOC病変は消失していました。
参考文献
背景
大腿骨外側滑車の広範囲にわたるOCD病変は、膝関節で最も多くOCDが見られる部位であるが、外科的な切除を行なっても予後が悪く、キャリアが終わる可能性がある。OCD病変を早期に発見し、保存療法を行えば成績が向上する可能性を秘めている。筆者らは現場でのスクリーニングや症状のない病変のモニタリングに有用であるとの仮説を立てた。
目的
①様々な年齢の子馬の大腿骨外側滑車の正常所見を記述すること
②牧場にいる子馬のスクリーニングを行い、無症状のOCD病変を早期に検出すること
研究デザイン
前向きコホート研究
結果
成長に伴い、軟骨が厚みが減り、骨化の前線が離れていき、骨端部への血管浸潤が減退した。無症状の骨軟骨症(OC)は、骨化前線の半円状の後退(局所的な骨化不全と残った軟骨)が特徴所見で、6頭の子馬(28から145日齢)に検出され、X線検査と超音波検査の両方でOCが確認された。X線検査と比較して、超音波検査の方がOC病変の形状(長さ、深さ、幅)の主観的な評価に優れていた。
主な限界
剖検により病変の検証ができなかった。
結論
大腿骨外側滑車の超音波検査は実践的で、値段も手頃で、信頼性のある診断技術であり、若馬のこの部位における生理的な所見と病的な所見を区別することができる。骨軟骨の結合部の複雑な形状を明らかにできると、非常に若い子馬における無症状のOC病変の迅速で包括的な評価ができた。