頸椎関節突起間関節(facet joint)の異常は、さまざまな年齢や血統の馬で報告されており、関節炎そのものによる症状だけでなく、骨関節炎による変形がおき、神経脊髄腔へと突出することにより神経を圧迫することで運動失調などをおこすことが注目されています。
しかしながら前肢跛行の原因となることはあまり注目されておらず、特徴的な歩様の異常を伴うことが過去の調査で明らかにされています。
1993年に英国ニューマーケットから報告された調査でまとめられています。
参考文献
8頭の症例が調査に組み入れられており、1歳から13歳で、種類はポニーからサラブレッドまで多岐にわたり、性別もばらばらでした。前肢跛行と頸の疼痛を示した症例は半数の4頭で、それ以外の4頭は前肢の診断麻酔で歩様が改善しませんでした。
跛行の原因が突き止められるまでに長期間経過しており、診断時の経過は2-32週間の慢性跛行でした。特徴的な歩様は常歩での前方短縮で、両前ともに歩様の変化がみられる場合や、一貫性がないこともありました。騎乗時により明瞭な歩様となることも多く、ランジングや騎乗により確認されることもありました。運動失調などの神経症状はみられませんでしたが、腹鋸筋の委縮がみられた馬が複数いました。
X線所見では、4頭で関節突起間関節の変形がみられ、うち3頭はC6-7の変形でした。椎体の異常は3頭、椎体間関節の変形は1頭でみられました。
5頭は症状の持続や馬主の希望により安楽死となり、3頭のうち1頭は1年後に跛行なし、1頭は4か月後に馬場競技に復帰、1頭は調査時点でまだ休養中でした。
剖検に供された2頭のうち、1頭は椎体の関節面に近い領域での壊死はみられたものの、細菌感染や腫瘍の組織所見はありませんでした。もう1頭は関節炎がみられた症例で、椎間孔の部分に滑膜シストがあったものの、神経には軸索変性の根拠となる所見がなく、神経内の結合織やルノー小体は多くみられ、神経圧迫が疑われました。
一般的にこの関節における関節症は約半数の馬で解剖時に確認されると報告されていますが、臨床症状のある馬においてX線画像の所見は明らかです。頸部神経根の圧迫が疼痛を示すのかどうかについては、ヒトや他の動物を参考に、ありえると考えられますが、さらなる調査が必要です。
この調査の結果から、常歩での前方短縮(肩が出ない、硬いなど)を特徴とした前肢跛行、頸部の疼痛および腹鋸筋の委縮は、頸椎の異常による跛行と関連しているかもしれないことがわかりました。頸部痛がなく、神経ブロックや関節内・滑液内ブロックでも跛行が改善しない馬についても、同疾患が疑われます。進んだ関節症や椎体の壊死については治療の方法が限られている、もしくは存在しないため、予後は悪いと考えられます。
|
|