前回の記事でNSAIDs投与に関連してみられることが多い右背側結腸炎についてのレビューを紹介しました。
今回は右背側結腸炎症例にみられる特徴的なエコー検査画像所見についてまとめた報告です。
右背側結腸炎の診断に腹部超音波検査が役立つか検証するために回顧的調査が行われました。2000-2001年の期間でノースカロライナ州立大の馬病院に来院した右背側結腸炎症例5頭と健常馬15頭の腹部超音波検査画像を比較しました。
その結果、症例において右11-13肋間で肝臓の腹側にみえる右背側結腸壁はすべての症例で低エコー領域を伴った壁の肥厚がみられ、腹側結腸との比率も大きくなっていました。一方で剖検で確認された結腸壁の肥厚がエコーで検出できていなかった点、健常馬において腸壁構造の評価が難しく(どこからどこまでの長さを計測すればいいのかわかりづらいため)、壁の厚みの測定には検査者間のばらつきがあった点が今後の課題とされました。
背景
右背側結腸炎は特異的な臨床症状を持たず、鑑別診断(砂による疝痛、小円虫幼虫症、慢性炎症性腸疾患、消化器リンパ肉腫、胃潰瘍、慢性サルモネラ症など)に挙げられる疾患との区別がつきにくいことが特徴です。これまでは試験的開腹もしくは腹腔鏡により直接結腸病変を観察することで確定診断されてきました。
しかし、1例の報告で超音波検査による結腸壁の評価が有用であったとの報告がなされたことで、安価にリスクを回避して生前診断できる方法となりうるか、検証されることになりました。
材料と方法
症例と対照
2000年1月から2002年1月の期間でノースカロライナ州立大学、大動物病院に来院した症例のうち、右背側結腸炎と診断し、超音波検査を行っていた症例を組み入れた。症状や検査所見(低タンパクおよび低アルブミン血症)から右背側結腸炎と推定診断され、安楽死もしくは死亡後の剖検で確定診断された症例でした。対照群として同じような体格と品種の様々な年齢の馬(アラブ、クォーター、サラなど、2-18歳)を用意した。
検査手技
第9から17肋間で毛刈りを行い、エコーゼリーをつけて3.5または5MHzのプローブで走査した。右側で肺野の腹側からはじめて10-15肋間まで、各肋間で背側から腹側になぞるように検査した。右背側結腸壁は、肝臓のすぐ軸側・腹側、十二指腸の腹側、右腹側結腸より背側に位置して見えた。腹側結腸との鑑別は結腸膨隆(くびれ)の有無で行い(背側結腸にはくびれがない)、背側と腹側の結腸接合部はVの字に見える。腹側結腸は肋軟骨のすぐ下で見えた。盲腸基部との区別は難しいが、肝臓との位置関係から判断した。
右背側結腸の壁の厚みは見えるところで計測した。計測は漿膜面の端から粘膜層の端までの長さとし、第12肋間における背側および腹側結腸の厚みをそれぞれ測定することで、腹側(内在性コントロール)との比を算出した。
統計解析
①それぞれの肋間での右背側結腸壁厚を症例と対照で比較
②12肋間での右背側結腸壁圧を症例と対照で比較
③12肋間での右背側結腸壁厚/右腹側結腸壁厚を症例と対照で比較
マンホイットニー検定、有意水準P<0.05
結果
症例は5頭で血統はクォーター2頭、サラ1頭、スタンダードブレッド1頭、クォーター×サラ1頭。性別は騙馬3頭、メス2頭。年齢は5-20歳。全てでNSAIDs投与歴(フルニキシンおよびフェニルブタゾン)あり、発症時にはNSAIDs投与中であった。
4頭で回帰性の疝痛、全頭で下痢、体重減少、食欲不振、沈鬱症状。2頭で下肢および腹部浮腫、2頭は発熱、3頭は頻脈、3頭は貧血、2頭は白血球増多、4頭は好中球増多または減少で3頭は桿状好中球増多。全頭で低タンパク+低アルブミン血症。
全頭で11および12肋間から右背側結腸を描出でき、13肋間では4症例と9対照馬の評価ができた。これらの肋間において症例のほうが有意に右背側結腸壁の厚みが大きく、12肋間における背側/腹側結腸壁厚の比も症例で大きかった。12肋間において症例では背側結腸の厚みは腹側結腸より有意に大きかったが、対照では差がなかった。また、腹側結腸壁の厚みも症例と対照で差はなかった。対照群の右背側結腸の厚みは平均0.35(0.24-0.59)cmであった。
肥厚した壁のエコー輝度パターンは、漿膜面と粘膜面の高輝度な線の間に低輝度な領域として見え、肝臓の輝度よりも低く、その領域は壁の厚みの50-75%を占めていた。
生存した1頭は診断時の壁厚1.57cmから、30日後に1.05cm、60日後に0.55cmにまで改善した。この症例では同時に症状も改善し、60日後には血清タンパク濃度が正常範囲内に戻った。一方で死亡した症例は壁厚が参照範囲に戻ったにもかかわらず、低エコー所見が残り、低タンパクおよび低アルブミン血症が改善せず、末梢の浮腫と食欲不振が残った。
剖検した4頭は全て顕著な粘膜面の粗造な潰瘍病変があり、壁の厚みが増しているのは確認できたが、超音波検査で測定していた部位がどこかはわからなかった。

考察
右背側結腸炎の症例では11-13肋間で肥厚した結腸壁を観察することができた。症例の肥厚した右背側結腸壁は粘膜下の浮腫や細胞浸潤および肉芽組織に相当する低エコー領域がみられた。一方で腸壁の5層構造を確認することは難しく、特に健常馬では粘膜層の管腔側の境界が不明瞭なために、過大な測定結果となっている可能性がある。しかしそれを差し引いても症例の結腸肥厚は明瞭であった。
右背側結腸と腹側結腸の壁厚比は、結腸の肥厚を判断するのに有用だと思われる。
治療していた2頭のうち1頭は壁厚が戻るにつれて症状も改善したが、1頭は壁圧が戻っても症状や検査所見が改善せず結腸破裂により死亡した。死亡症例は剖検で破裂部の結腸は薄く、他の部分の結腸では肥厚が確認されており、超音波検査による結腸壁のモニタリングがモニタリングに役立つかはまだわからない。
右背側結腸炎の診断感度は低いとする報告もあるし、今回の調査では感度も特異度もわからない。ひとつの欠点は右背側結腸の病変部を描出できないかもしれない点、もうひとつは壁の厚みの測定は検査者間でばらつきが大きく、重度の結腸潰瘍の症例でも対象馬と同様の壁厚となっていた点である。
まとめると、腹部超音波検査による右背側結腸の壁厚測定は実際の厚みを反映していて、診断に有用かもしれない。しかし、検査の感度、特異度および壁厚計測の再現性については今後さらに検証すべきである。
参考文献