球節炎の原因となる骨軟骨疾患のひとつとして、第三中手骨矢状稜のOCDが挙げられます。セリのレポジトリ検査等でも、矢状稜近位背側のOCD様骨軟骨片はしばしばみられる所見であり、なかには関節炎を引き起こす場合があることが知られています。

一方で、矢状稜の遠位(関節荷重面)にもOCD病変が形成されることがあることが知られており、診断には少し特殊な撮影方法を必要とします。
負重した状態のX線検査では、第一指骨と矢状稜が重なってしまうため、矢状稜の遠位側に形成された病変は検出困難となってしまいます。したがって、患肢を屈曲した状態で、より広範囲の矢状稜を観察できるように工夫することが求められます。
多くの症例は、ルーティンな撮影条件に含まれるDP像(正面からの撮り下し像)において、矢状稜に透過像や不整な輪郭を伴うとされています。球節炎の症例においてルーティンな撮影条件で病変が検出されなかった場合、屈曲位の撮影が推奨されます。

病変の形成された部位にもよると思われますが、球節を最大限屈曲した状態で関節鏡によるアプローチが可能だった症例の治療成績が報告されており、競走馬の予後も良好(11/12が出走)であると報告されました。
症例は全部で16頭で、うちサラブレッド14頭(1歳3頭、2歳9頭、3歳2頭)で平地競走馬として調教されていました。全ての症例でさまざまな程度の跛行を伴い、球節の腫脹は13頭でみられたほか、球節の腫脹がなかった3頭はAbaxial sesamoid blockで陰性かつLow 4 point blockで陽性でした。
X線検査所見は、DP像における楕円形または境界不明瞭な透亮像が多く、屈曲ラテラル像では明らかな透過像またはいびつな凹みとして同定されました。16頭のうち、両側に所見がみられたのは7頭、片側は9頭で、すべて前肢の球節でした。
リハビリ中の2頭を除き、12カ月以上の追跡調査が可能でした。12頭は競走馬で、11頭が出走し、出走しなかった1頭は術前に変形性関節症の所見がありました。
過去の調査報告における球節のOCD所見は、ほとんどが通常の4方向撮影(DP、LM、DLPMO、DMPLO)に基づいていて、これらでは矢状稜遠位の病変が検出できていなかった可能性があることから、本当の有所見率はわかりません。この部位のOCDを見つけるためにはFlexed-DPは必須の撮影条件で、OCD病変のみでDJD所見を伴わない症例の予後は良好であると考えられます。
若い競走馬および育成馬の跛行を伴う球節炎では、第一指骨背側の骨片骨折が最も疑われますが、矢状稜遠位のOCDも鑑別に入れておくことが必要かもしれません。
参考文献
要約
調査理由
第三中手骨の矢状稜遠位における離断性骨軟骨症(OCD)についてこれまでに文献で記述されていない。
目的
第三中手骨遠位矢状稜におけるOCDの敵、X線画像、関節鏡術中の特徴を記述し、成績を報告すること。
デザイン
回顧的症例集
方法
2006-2013年の期間に第三中手骨矢状稜遠位のOCDで紹介来院した症例と画像を回顧的に調査した。追跡調査は電話による聞き取りおよび競走成績を収集した。
結果
16頭の跛行を呈した馬において第三中手骨矢状稜のOCDがみつかり、9頭は片側、7頭は両側の所見であった。所見はすべて屈曲ラテラル像で検出されたほか、21関節はDP像でも検出された。病変はすべて背側から球節を最大限屈曲した状態で、関節鏡にてアクセス可能な位置にあった。したがって骨片の摘出および掻把を行うことができた。12カ月以上の追跡調査が可能であった14頭中13頭で運動復帰し、競走馬は11/12が出走した。
結論
矢状稜の近位部の病変とは違い、矢状稜遠位のOCDは第三中手骨におきやすいように思われる。病変はDPもしくは屈曲ラテラルのみで同定することができ、関節鏡で治療可能である。矢状稜遠位のOCDがある可能性を認識し、その同定に必要なX線検査の撮り方があることを認識しておくべきである。病変にアクセスするためには関節鏡手術のアプローチも改変が必要となる。

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