上腕骨疲労骨折は若齢の競走馬にみられることが多く、反復トレーニングにより皮質骨に疲労性傷害が起きることが病態の特徴と考えられています。
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疲労骨折は完全骨折に先行して起きることが知られており、疲労骨折の段階で診断することができれば、致命的な完全骨折を未然に防ぐことができると考えられています。
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この疾患の診断において、海外では核シンチグラフィがゴールドスタンダードとされており、さらにX線検査での仮骨の検出が決め手となります。しかしながら急性期には仮骨の検出が難しいことも知られています。
核シンチグラフィに基づいた調査報告では、上腕骨における疲労骨折の好発部位は、近位尾側、遠位頭側および遠位尾側で、完全骨折に関連する化骨形成は近位尾側が多いことがわかっています。
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我々の育成馬における上腕骨疲労骨折の発生状況調査では、ほとんどの上腕骨疲労骨折が遠位背側の皮質骨に発生することが明らかとなりました。しかしながら、ポータブルX線発生器の出力の限界から、近位で分厚い筋肉が重なる部位の化骨形成を検出するのに十分な質の画像が得られていない可能性も考えられました。
そこで、急性期の上腕骨疲労骨折を超音波検査を用いて検出することができるか検証されました。
超音波検査は骨表面のギャップや内出血などを検出することができるため、腸骨翼や肩甲骨の疲労骨折の診断において有用性が示されてきました。
特に筋肉が分厚く、一次診療のポータブルX線検査では検出が難しいと思われる、上腕骨の近位尾側領域に注目して超音波検査で骨の表面をなぞるように評価したところ、疲労骨折に特徴的な所見を検出できることが報告されました。
日本国内では美浦トレセンで核シンチグラフィが稼働したばかりで、今後の知見の積み重ねが期待されるところです。一方で核シンチグラフィが普及している国においても、現場レベルで低コストで診断できる方法は求められていて、やってみる価値は十分にありそうです。
検査手技
プローブ:カーブリニア、マイクロコンベックス、もしくはリニア
上腕尾側、上腕三頭筋を押し込むようにして上腕骨の尾側骨表面を近位から遠位方向になぞるように検査する。所見は異常な輪郭、骨表面の不整、ギャップ、不均一な仮骨。かならず両側を検査。長軸断面が異常所見の検出に優れる。
症例
7頭、10の上腕骨近位尾側疲労骨折を検出(3頭は両側)。初診時の跛行Gは中央値4/5、半数は来院まで2-4週間経過、来診時は2頭で3/5、3頭で4/5の跛行。4頭は3カ月以上の休養歴あり、3頭で肩の伸展試験に顕著に反応、屈曲試験には中程度の悪化。
超音波検査では盛り上がった輪郭、不整な骨表面、階段状のギャップ、および仮骨を検出できた。周囲の筋肉および軟部組織の異常は検出されなかった。
X線検査で異常が検出できた症例は6頭で、外骨膜増生が8肢、内骨膜増生が6肢。シンチグラフィで検出できたが、エコーでは検出できなかったのは1肢。
繁殖のために引退した1頭を除き、6頭が休養と運動制限で運動復帰でき、10-16か月後に4頭が競走復帰した。
再検査は運動復帰の意思があった5/7頭で30-90日間隔で平均11.5ヵ月まで行うことができた。ギャップは最初の30-70日で消失し、仮骨の表面は30-60日で滑らかに、盛り上がった輪郭も徐々に平坦な輪郭へと戻ることが確認できた。
考察
疲労性傷害は両側に起こることが多く、本調査においても3/7が両側に病変を持っていたことから、両側の検査が推奨される。両側に病変を持つ馬は、痛みを打ち消しあうことで、見た目上の跛行の程度が軽くなってしまう可能性がある。本調査においても、シンチグラフィでは検出できたが、超音波とX線の所見がどちらも得られなかったケースが含まれており、所見がなくても疲労骨折は完全に除外することができないことは記憶にとどめておく必要がある。