育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧

化膿性滑膜炎を疑う症例から分離された細菌の抗菌薬感受性(Miagkoffら2020年)

カナダ、モントリオール大学から発表された、10年にわたる化膿性滑膜炎(疑いを含む)症例について、細菌培養検査と薬剤感受性試験をまとめた調査。 これによると、全体の49%から細菌が分離され、成馬(文献によると6ヵ月以上)では、グラム陽性菌が多く分…

競走馬における起源不明の化膿性滑膜炎(Byrneら2020)

主に当歳など子馬では、ストレスをはじめとするさまざまな原因で免疫機能が低下し、菌血症となった結果、血行性に化膿性滑膜炎が発生すると考えられています。 一方で、成馬では穿孔性の外傷など明らかな原因を伴わない化膿性滑膜炎はまれだと考えられていま…

2歳サラブレッド競走馬の運動器損傷のリスク因子(Coggerら2006年)

運動器損傷のリスク因子に関する解析は、非常に難しい調査です。調教場や調教師によって方針が異なることや、馬によって調教メニューをアレンジすることが普通です。したがって、実際の症例や調教している競走馬の集団についてどんな方法を用いて調査しても…

浅屈腱のエコー所見と基質の加齢の影響ほか(Gillisら)

馬の浅屈腱は、成長や加齢にともない、弾性率(Elastic modulus:物体の変形しにくさを表す数値)が増加することが明らかになっています。 これには、コラーゲン線維の架橋構造が増加することが関係しているようです。 また、年齢が増すごとに浅屈腱の腱線維…

調教初期にみられる浅屈腱のエコー所見の変化 ほか(Gillsら)

育成期のサラブレッド競走馬では、浅屈腱の横断面積増加がみられることがあります。成長期の屈腱に運動負荷がかかることでこのような症状が出現するのですが、詳しいメカニズムはわかっていません。また、経験上、これらのうち数%程度の割合で屈腱炎を発症…