育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

飛節

子馬の脛骨OCD早期病変(Olstadら2007)

調査で分かったこと OC病変がどのように形成されるかは、馬よりも豚で研究が進んでいます。 豚におけるOC病態形成では、成長板軟骨から関節の間で、軟骨への血液供給が遮断されることで、虚血性の壊死を起こすことが大きく関わっていることがわかっています…

通常成馬の足根関節軟骨の超音波検査による評価(Tomlinsonら2000)

調査で分かったこと 飛節の超音波検査では、特に下腿足根関節において、関節軟骨を評価することができます。 超音波検査を用いることで、距骨の内側または外側滑車および脛骨中間稜において、関節表面の軟骨を観察することができます。高エコーな骨の輪郭に…

足根関節OCD検出におけるX線超音波検査の比較前向き研究(Relaveら2009)

調査で分かったこと 脛骨内果の病変検出は難しく、関節面を完全に評価することが難しいことが原因と思われます。骨の形状から、まったく骨を重ならないように撮影することが難しく、また限局した病変はわずかな関節表面の変化のみで、X線検査では検出できな…

脛骨中間稜内側面のOCD病変(Kadicら2020)

調査で分かったこと 脛骨中間稜の病変は飛節のOCDでは最も多いとされます。これは骨片が比較的大きく、内外像または背外底内45度斜位像でほとんどが診断できます。 しかし、2020年に掲載されたこの文献では、脛骨中間稜内側面にのみ発生するOCD病変について…

サラブレッド1歳馬のレポジトリ検査でみられる明らかな病変の分布と所見率(Oliverら2008)

ニュージーランドのサラブレッド1歳における飛節と膝関節の骨軟骨病変所見率の調査。

若齢サラブレッドの膝関節と飛節のOCD治療(Clarkeら2015)

膝関節OCD(大腿骨滑車)と飛節OCD(脛骨中間稜)は、購買前検査(レポジトリー検査)でよく見つかる病変部位です。 近年ではセリよりも前に検査を行うプレレポジトリーや、スクリーニング検査が増加してきており、OCDの診断が早まってきています。 これらの…

脛骨中間稜のOCDがある馬の軟骨由来バイオマーカーと炎症メディエータ(de Grauwら2006)

調査で分かったこと 主な軟骨基質であるⅡ型コラーゲンの代謝変化は、プロペプチドおよび断端をイムノアッセイで評価したところ、OCDの有無で有意な差はなかった。 リン脂質が代謝されてできるエイコサノイドは、LTB4およびPGE2濃度がOCDの有無と関係し、臨床…

脛骨中間稜OCDに対する関節鏡手術とバイオマーカーの変化(Brinkら2015)

調査で分かったこと このチームの調査では、過去に関節腫脹のあるOCD症例馬において、病理組織学的に滑膜炎を示す滑膜細胞増殖および炎症細胞浸潤があること、およびそのスコアリングが評価に有用であることが示されています。 equine-reports.work (adsbygo…

脛骨にOCDのある馬の下腿足根関節滑膜の組織病理所見と臨床症状の関連(Brinkら2010)

調査で分かったこと 飛節のOCDのなかでも最も多く見つかる脛骨中間稜のOCDについて、臨床的な所見や滑膜の病理組織所見との関連を評価した調査があります。 症状を示さないOCDも多くありますが、関節腫脹を伴うOCDの症例では、病理組織学的に滑膜の細胞増殖…

飛節のオカルト軟骨下骨シスト状病変(Garcia-Lopezら2004)

文献でわかったこと 飛節を構成する骨には、感染に関連してシスト状病変が形成されることがごくまれにあります。この病変はルーティンなX線検査では検出することができず、そのため表題の通り「オカルト」と表現されているようですが、シンチグラフィ検査で…

下腿足根関節の軟部組織損傷:関節鏡所見の回顧的調査30頭(Barkerら2013)

飛節を原因とする跛行に関連する骨疾患は、診断の難しい足根骨の骨折や、脛骨外果または内果の骨折といった病変が挙げられます。しかし、骨の損傷だけではなく、関節内の軟部組織損傷でも跛行することが報告されています。 equine-reports.work equine-repor…

脛骨外果骨折の関節鏡による治療26頭(Smithら2011)

脛骨外果骨折について連続して取り上げます。 脛骨外顆骨折 この骨折は、飛節の外側を構成する脛骨の外果に発生します。外傷に関連して発生することが多く、転倒や転落などのアクシデントはこの疾患を疑う上でのキーとなる稟告です。育成期には、凍った地面…

脛骨外果骨折の関節鏡による骨片除去:13頭の回顧的調査(O'Neillら2010)

脛骨外果骨折について連続して取り上げます。 この骨折は、飛節の外側を構成する脛骨の外果に発生します。外傷に関連して発生することが多く、転倒や転落などのアクシデントはこの疾患を疑う上でのキーとなる稟告です。育成期には、凍った地面での転倒や、ウ…

馬の脛骨外果骨折16頭(Wright1992)

脛骨外果骨折について連続して取り上げます。 脛骨外顆骨折 この骨折は、飛節の外側を構成する脛骨の外果に発生します。外傷に関連して発生することが多く、転倒や転落などのアクシデントはこの疾患を疑う上でのキーとなる稟告です。育成期には、凍った地面…

近位足根間関節の骨軟骨片に対する関節鏡視下除去手術(Espinosa-Murら2018)

飛節のうち、近位足根間関節に見つかる骨片の臨床的意義は依然として不明ですが、関節鏡手術によって除去できることが報告されています。 この骨軟骨片があることが関節炎の原因となるかは不明ですので、必ず骨片を摘出する必要があるとはいえませんが、最小…

2歳馬のトレーニングセール時にみられるX線異常所見率とパフォーマンスとの関連(Meagherら2013)

2歳トレーニングセールは、調教を積んで速く走れるようになった馬を、公開調教にて実際に走っている姿を見て購入できるセリです。 レポジトリ検査も公開されており、現時点では調教可能だが、その後に与える影響はどうか、が調査されています。 X線検査にお…

中心および第三足根骨盤状骨折の内固定術成績(Winbergら 1999年)⑤

その① はじめに equine-reports.work その② 調査の内容 equine-reports.work その③ 成績 equine-reports.work その④ 考察前半 equine-reports.work 考察 手術手技について MartinとHerthelらが1992年に報告した4.5mmハーバートスクリューによる整復方法があ…

中心および第三足根骨盤状骨折の内固定術成績(Winbergら 1999年)④

その① はじめに equine-reports.work その② 調査の内容 equine-reports.work その③ 成績 equine-reports.work 考察 病態について 筆者らの病院で行った内固定術のうち5%がこの骨折。スウェーデンではスタンダードブレッド競走馬に多くみられる。 遠位足根骨…

中心および第三足根骨盤状骨折の内固定術成績(Winbergら 1999年)③

その① equine-reports.work その② equine-reports.work 成績 臨床症状 レースや強調教後に中程度の跛行(グレードは10段階でほとんどが4-5)。発症から10-14日の期間で徐々に良化し、来診時グレード2-3であった。 身体検査 飛節の背側で熱感・疼痛あり。腫…

中心および第三足根骨盤状骨折の内固定術成績(Winbergら 1999年)②

その① equine-reports.work 症例 スウェーデンの馬病院で足根骨盤状骨折を診断し、内固定手術した20頭。 【血統と用途】 18頭はスタンダードブレッド競走馬、1頭はサラブレッド競走馬、1頭はスウェーデン温血種で馬術競技馬。 【年齢】 年齢は1-8歳で、15頭…

中心および第三足根骨盤状骨折の内固定術成績(Winbergら 1999年)①

はじめに 足根骨の骨折は、競走馬で報告され、特にスタンダードブレッド種での治療報告が多い疾患です。第三足根骨のほうが中心足根骨よりも多いという報告もありますが、まだ症例数の多い報告はありません。骨折の発生は、足根骨の背側面で最も起きやすいと…

楔状の第三足根骨は盤状骨折発症と関連する(Bairdら 2001年)

第三足根骨の盤状骨折は、主に競走馬にみられる骨折のタイプです。 この骨折には、なりやすい骨の形状があることが文献で示唆されています。購買前検査(レポジトリー)などで発見した場合、将来的に骨折につながる懸念があることは認識しておくべきです。 /…

足根骨診断のための画像診断の比較(Danielら 2012年)

馬の臨床においてもMRIは関節や骨の状態を評価するのに有用であることが示されています。 飛節においてもこれは同様で、他の画像診断よりも詳細な評価が可能で、病的な所見を検出するのに優れています。 特に骨折の診断では通常の4方向のX線検査では検出でき…

第三足根骨盤状骨折の治療5例(Lindsayら 1982年)

飛節を構成する第三足根骨の盤状骨折に関する治療報告は数報あります。 古い報告では、スクリューによる外科的な整復を行った2頭は競走復帰できたが、保存療法をとった3頭は、長期的な休養にもかかわらず骨関節炎が進行して跛行が残り、調教復帰がかなわなか…

競走用でない馬の中心足根骨骨折の形状と術後長期予後(Gunstら 2016年)

競走以外の目的で使用されている馬にも足根骨骨折が発症することが知られています。 今回紹介する文献では、乗用の馬でも、CT画像をもとにした理想的な内固定術を行うことで、跛行なくもとの運動や競技に復帰できることが示されています。 足根関節の骨棘や…

非競走馬での中心足根骨骨折4例(Knuchellら 2016年)

中心足根骨の骨折は、第三足根骨に比べるとまれな骨折です。 特に非競走馬ではまれな骨折ですが、これは単純X線検査でも十分に診断可能で、底外-背内方向(斜め外側から)で少しずつ角度をずらしながら撮影することで診断可能です。 // 参考文献 pubmed.ncbi…

馬の中心および第三足根骨骨折(Tulamoら 1983年)

少し古い文献にはなりますが、足根骨盤状骨折が内科療法では競走復帰が難しいことが示されています。 スタンダードブレッドとサラブレッドの競走馬11頭でみられた調教またはレース中の骨折で、長期休養のみでは運動復帰がかなわなかったと報告されています。…

足根骨骨折を保存的に管理した25例の長期成績(Murpheyら 2000年)

飛節構成骨である足根骨は、近位-遠位方向の体重による負荷を受け、盤状に骨折します。 大きな骨片は内固定術を行うことが推奨されていて、競走中により大きな負荷がかかると想定されるサラブレッドでは、保存療法では競走復帰の率が低いことが知られていま…

第三足根骨盤状骨折に対する3.5mmスクリュー固定(Barkerら 2017年)

第三足根骨盤状骨折に対して、最小限の侵襲で3.5mm皮質骨スクリューによるラグスクリュー法を用いたサラブレッド競走馬17頭

若齢サラブレッドの足根骨盤状骨折(Steelら 2019年)

若齢サラブレッド競走馬における第三および中心足根骨の盤状骨折の所見率、X線画像での解消および成績