育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

脛骨中間稜のOCDがある馬の軟骨由来バイオマーカーと炎症メディエータ(de Grauwら2006)

調査で分かったこと

主な軟骨基質であるⅡ型コラーゲンの代謝変化は、プロペプチドおよび断端をイムノアッセイで評価したところ、OCDの有無で有意な差はなかった。

リン脂質が代謝されてできるエイコサノイドは、LTB4およびPGE2濃度がOCDの有無と関係し、臨床症状の発言にかかわるメディエータになることが示唆されました。

 

他のバイオマーカーは以下の記事参照

equine-reports.work

 

参考文献

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

目的

 OCDのある若馬(0から24カ月齢)でみられる軟骨基質代謝の変化が、より年齢のいった馬(24から48カ月齢)でOCDの臨床症状がある馬でもみられるか評価すること。これらの臨床症状が出始めることにエイコサノイドが果たす役割を調査すること。

 

検体

 X線検査で脛骨中間稜にOCDがあり臨床症状のある24頭の温血種馬について、症状のある16頭、22関節およびX線所見と症状のない8頭、16関節から関節液を採取した。

 

方法

 Ⅱ型コラーゲンのターンオーバーは、合成系としてⅡ型コラーゲンのカルボキシプロペプチド(CPⅡ)、分解系としてコラゲナーゼにより分断されたⅡ型コラーゲン(C2C)を対象とした特異的イムノアッセイで評価した。さらに、GAG(グリコサミノグリカン)、LT(ロイコトリエン)B4、システイニルLT、PG(プロスタグランジン)E2濃度を明らかにし、OCDのある関節とない関節で濃度を比較した。

 

結果

 CPⅡ、C2CおよびGAGの濃度はOCDの有無で有意差はなかった。OCDのある関節液ではLTB4とPGE2の濃度が有意に高かった。

 

結論と臨床的関連性

 コラーゲンやプロテオグリカン代謝の変化は、脛骨中間稜OCDの症状がある24から48カ月齢の馬では検出されなかった。しかし、OCDのある関節でLTB4やPGE2の濃度が高いことは、OCDの臨床症状が発現にかかわるメディエータであることが示唆された。