育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

剥離骨折

CTは肘の跛行における病変を検出する画像診断技術である:99頭139関節の調査(Zimmermanら2022年)

肘関節を原因とする跛行は多くないものの、まれに橈骨近位や上腕骨遠位の関節面に形成される骨病変が跛行の原因として検出されることがあります。 身体検査で肘や肩の関節が腫れていることを確認することは難しく、屈曲痛を示さず、屈曲試験に反応しないこと…

第三中手骨矢状稜遠位のOCD診断と治療(Wrightら2014)

球節の、特に第三中手骨矢状稜遠位のOCDは、跛行の原因となることがあります。 球節内のOCDは多く報告されていて、第三中手または中足骨では矢状稜またはそれに隣接する顆の部分に限られて、欠損しているように見えます。この病変は前肢よりも後肢の方がよく…

ベルギー温血種におけるトウ状骨の骨片と形状の関連(Claerhoudtら2011)

トウ状骨はトウ嚢とよばれる袋の中に存在し、蹄骨と深屈腱の間に位置しています。アクシデントによる外力や外傷によって骨折がおきることが知られています。 トウ状骨骨折が起きると、中程度から重度の跛行を呈しますが、身体検査では特異的な所見が得られる…

トウ状骨遠位の骨片:跛行とMRIの関連(Yorkeら2014)

トウ状骨はトウ嚢とよばれる袋の中に存在し、蹄骨と深屈腱の間に位置しています。アクシデントによる外力や外傷によって骨折がおきることが知られています。 トウ状骨骨折が起きると、中程度から重度の跛行を呈しますが、身体検査では特異的な所見が得られる…

外側膝蓋靱帯の超音波検査における正常と異常所見(Gottliebら2016)

膝関節を原因とする跛行のうち、膝蓋靱帯の損傷は多くありません。靱帯損傷の多くは外傷と関連していて、ほとんどで靱帯付着部の骨折を伴うことが報告されています。 膝蓋靱帯は正常な馬でも超音波検査画像は独特な見え方をしますが、重度の跛行を伴う靱帯損…

スタンダードブレッドのP1掌側または底側骨片の摘出時期によるパフォーマンス

サラブレッド競走馬では、第1趾骨底側の骨片は跛行の原因となることがあります。 一方で、スタンダードブレッドではこの所見はよくみられ、骨片摘出がよく行われているようですが、手術前後でパフォーマンスが変化することはなかったと報告されています。 参…

後肢P1底側骨片による跛行19症例(Barclay1987)

第1趾骨底側の骨片骨折は跛行の原因となることがあります。 この部位は種子骨靱帯をはじめとした球節後面の安定化を担う靱帯が付着しますが、これらに大きな負荷がかかると裂離骨折が発生します。 このタイプの骨折は後肢に多く発生し、1歳せりのレポジトリ…

中間膝蓋靭帯の損傷は他の膝関節の異常と同時に発生することが多い(Hoaglundら2019)

膝蓋骨に付着する靱帯は内側、中間、外側の膝蓋靱帯がある。なかでも中間膝蓋靱帯は膝蓋骨遠位から脛骨近位背側の脛骨粗面に終止する。 この靱帯の損傷はこれまでにあまり報告がないが、一般的には運動復帰の予後が悪いとされていた。今回は超音波検査で中間…

競走馬におけるP1掌側または底側面の骨軟骨片(Whittonら1994)

第一指(趾)骨の掌側(底側)骨片 第一指(趾)骨の掌側(底側)に発生する骨軟骨片は、靱帯付着部に発生します。球節に大きな捻転負荷がかかることで、靱帯が付着している部分がちぎれてしまう捻除骨折と考えられています。 この骨折は、関節や骨が未熟な…

球節背側骨片骨折に対する非外科と外科処置の競走成績(Ramzanら2020)

背景とはじめに 調査でわかったこと 参考文献 背景とはじめに 球節背側の骨片は、1回の大きな負荷もしくは慢性的な繰り返し負荷によるリモデリングから二次的に発生する可能性があります。 この骨片に対する治療は、外科的に摘出する方法とその成績が報告さ…

球節の骨片骨折に対する非外科と外科的処置(Ramzanら2020)

背景とはじめに 球節背側の骨片は、前肢でP1背内側に最も発生しやすく、偶発所見の場合もあれば、関節腫脹や跛行を伴うこともあります。1回の大きな負荷もしくは慢性的な繰り返し負荷によるリモデリングから二次的に発生する可能性があります。 この骨片に対…

英国競走馬における第一指骨近位背側骨軟骨片の発生分布(Walshら2018)

はじめに 様々な血統や用途の馬において、球節内の骨片骨折は背内側に多く発生することが報告されています。球節に骨折した場合には骨片は角がありますが、慢性または陳旧性の骨片は角がとれた丸い形をしています。 研究でわかったこと 英国におけるサラブレ…

球節に起因する跛行の馬にみられる低磁場MRI所見131頭(Powell2012)

球節領域の損傷はさまざまな病態があり、微小な変化は単純X線検査だけでは検出できない可能性があります。MRIでは、骨折や骨軟骨損傷に関連した信号パターンが続々と明らかにされてきています。 (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); はじめ…

肩関節のわずかな骨軟骨病変の診断所見と関節鏡処置後の予後(Doyleら2000)

肩関節を原因とする跛行は、診断が難しいです。 はじめに 文献でわかったこと 参考文献 はじめに 肩関節の骨病変や軟骨下骨の異常およびOCDは、若馬で跛行の原因となることが報告されています。しかし、臨床現場では、ごくわずかな所見しか得られず、X線検査…

第一趾骨近位底側骨片の関節鏡視下除去23頭(Simonら2004年)

第一趾骨底側の骨片は、若齢馬で症状を伴わないOCのような症状としてみられる骨軟骨片もあれば、運動負荷が増大して付着する靱帯から受ける力によって裂離骨折を起こすこともあります。 後肢での発生が多いこの骨折に対し、スタンダードブレッド競走馬におけ…

若齢馬における近位指節間関節背内側の骨軟骨片(Fjordbakkら2007)

はじめに 文献でわかったこと 参考文献 はじめに 近位指節間関節の骨片は、レポジトリ検査などでまれに見つかることがあります。 しかしながら、この骨片の臨床症状や競走成績に与える影響に関する調査は多くなく、判断が難しいことがあります。 (adsbygoogl…

第一指(趾)骨背側骨片除去後の競走成績(Colonら2000)

球節における第一指(趾)骨骨片骨折は競走馬で非常に多くみられる骨折で、多くはX線検査で診断されてきましたが、近年では超音波検査でより詳細に関節を観察して骨片が検出できることが示されています。 equine-reports.work (adsbygoogle = window.adsbygo…

球節背側骨片の診断におけるX線と超音波の比較(Plevinら2021)

前回に続いて球節の骨軟骨片の診断に関する超音波検査とX線検査の比較。 前回はこちら equine-reports.work (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); サラブレッド競走馬の前肢球節に限定した比較を行ったところ、X線検査の骨片検出感度は47%で…

球節背側骨片の診断におけるX線と超音波の比較(Vanderperrenら2009)

球節背側の骨片は、標準的な4方向(内外・背外掌内、背掌、背内掌外像)のX線検査で検出できます。しかし、ときにはわずかなくぼみや透過像として描出されることがあり、このような場合には超音波検査で詳細な観察をすることで骨片の有無や損傷の部位を明ら…

第一趾骨底側骨片を原因とする跛行19症例(Barclayら1987)

後肢球節において、第一趾骨底側の骨片は多く見られる所見です。この部位は種子骨靭帯や輪状靭帯の付着部が剥離することや、骨軟骨炎に関連した骨片として発生します。骨軟骨炎で関節面におよばず関節炎と関連しない場合には予後は良好です。関節面におよん…

後肢近位趾節間関節の骨片摘出術3頭(Schneiderら1994)

後肢近位指節関節に骨片骨折と、それに関連した関節の腫脹と跛行がみられた症例に対して、関節鏡手術により骨片摘出を行った症例報告。これによると、3頭中2頭は問題なく競走復帰できました。 pubmed.ncbi.nlm.nih.gov 3頭の馬(2頭のスタンダードブレッドと…

外掌側手根骨間靱帯の剥離骨折の所見率と外科治療への反応(Beinlichら2005)

はじめに 文献で分かったこと はじめに 馬の手根関節掌側にある靭帯は、主に内掌側手根骨間靭帯と、外掌側手根骨間靭帯があります。 内掌側靭帯は損傷や裂離骨折が多く報告されています。この靭帯は、橈側手根骨遠位外側面に起始し、第三手根骨近位掌内側と…