育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

球節背側骨片の診断におけるX線と超音波の比較(Vanderperrenら2009)

球節背側の骨片は、標準的な4方向(内外・背外掌内、背掌、背内掌外像)のX線検査で検出できます。しかし、ときにはわずかなくぼみや透過像として描出されることがあり、このような場合には超音波検査で詳細な観察をすることで骨片の有無や損傷の部位を明らかにできます。

しかし、そのような微細な骨へのダメージが関節機能に与える影響は評価が難しいです。また、パフォーマンスへの影響はまだ明らかにされていません。関節鏡手術により軟骨や軟骨下骨の評価を行うことは、その後の管理の参考になると考えられます。

 

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

目的

 球節背側の骨軟骨片を検出するにあたり、超音波検査とX線検査の臨床的有用性を比較すること。

 

デザイン

 横断研究

 

動物

 36頭、前肢球節19関節、後肢球節29関節

 

方法

 すべての関節において、X線検査(標準的な4方向)と超音波検査を関節鏡手術前に行った。X線検査と超音波検査で検出できた骨片の数と部位を関節鏡の所見と比較した。

 

結果

 X線検査で検出された骨片の数と部位が関節鏡所見と一致したのは21関節/48関節(44%)であった。超音波検査で検出された骨片の数と部位が関節鏡所見と一致したのは46関節/48関節(96%)であった。2関節は超音波検査では検出できなかった骨片が追加で見つかった。超音波とX線の画像を比較すると、3関節で超音波検査のほうが骨片が多く、1関節で超音波検査のほうが少なかった。X線検査で骨片がありそうだった症例について、超音波検査で骨片がないと確かめられたのは4関節、骨片があると確かめられたのは3関節であった。さらに超音波検査ではX線検査ではわからなかった骨片の部位も明らかにすることができた。

 

結論と臨床的関連性

 本調査の結果から、球節背側骨片の数や部位の検出において超音波検査は有用であることが示唆された。