育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

骨折

馬の胸腰椎における脊椎症のX線およびシンチグラフィによる評価:回顧的調査(Meehanら2009)

胸腰椎、腰仙椎および仙腸関節の病変はプアパフォーマンスの原因になることが明らかにされてきました。棘突起衝突や椎体間関節炎についてよくわかってきましたが、脊椎症についてはまだ情報が限られています。脊椎症は椎体間の関節癒合または変形性疾患で、…

カリフォルニアのクォーターホースとサラブレッド競走馬における尾側腰椎の骨折(Collarら2015)

椎骨の病態は馬における跛行や背部痛の原因となりますが、腰椎には手が届かず、診断や治療の方法が限定されていて難しいのが現状です。しかしながら、競走中に椎骨の骨折が起こることがあり、そのほとんどは腰椎で発生します。腰椎の骨折は、典型的には外傷…

若いサラブレッドのP1骨折の成績(Ellisら1987)

第一指骨/趾骨(P1)の矢状骨折はさまざまなタイプに分類されていて、古い文献のため矢状骨折の長さの分類は最近のものとは異なっています。 矢状骨折は、短い不完全骨折が骨体の半分以下、長い不完全骨折が骨体の半分以上および完全骨折に分類されています…

ケンタッキー州の135頭の馬における145の顆骨折の治療成績(Zekasら1999)

前回と同じ症例シリーズで、手術後の成績を比較検討した文献があります。 equine-reports.work これまでにも骨折の形状や部位および変位の有無などが競走復帰の予後に影響することが明らかにされてきました。変位のある骨折では内固定手術が必要で、予後は悪…

ケンタッキー中央部における135頭の第三中手骨および中足骨の顆骨折のタイプと部位(Zekasら1999)

第三中手骨および中足骨の顆骨折は、競走馬の球節において一般的に見られる骨折で、サラブレッドやスタンダードブレッドで報告されているものがほとんどです。この骨折は急性の発症メカニズムと考えられてきましたが、近年の調査からストレス性の変化が掌側…

馬の寛結節の骨折1997−2007年の29症例(Dabareinerら2009)

馬の骨盤骨折は、身体の中心に近い位置にあり大きな筋肉に囲まれた骨のため、高線量のX線を必要とする点で現場での診断がつきにくい骨折です。また、骨盤を構成する腸骨、恥骨、坐骨は立体的な構造のため、平面的な画像のみでは全て評価するのは難しいと考え…

競走馬における上腕骨骨折と疲労骨折(Technote UC Davis)

上腕骨骨折と疲労骨折に関する一般的な情報 上腕骨骨折は先行する疲労骨折に関連した骨の脆弱化によって発生するのが典型的である。疲労骨折が多く発生する部位は上腕骨の近位尾側面(頸部:上部の後側)、遠位皮質骨の頭側面(尾側面は少ない、上腕骨顆の近…

サラブレッド競走馬における上腕骨骨折パターンのレビュー(Sammosら2009AAEP)

2009年のAAEPでは、上腕骨骨折のパターンについてのレビューが発表されています。 骨折の特徴 ストレス骨折(疲労骨折)は特定の部位に決まってみられることがわかっています。ストレス骨折に関連した骨代謝活性の上昇が核シンチグラフィで検出されるほか、X…

プアパフォーマンスの原因としての成馬の肋骨骨折;73頭の診断、治療および成績(Hallら2023)

馬の肋骨骨折は、仔馬において母馬から蹴られたり、牧柵などに激突したり、転落したりして外傷性に起こることが一般的です。 一方で、成馬では主に頭側の肋骨に疲労骨折が発生することが知られていて、重度な症状の場合は前肢跛行を呈しますが、通常はプアパ…

トウ状骨遠位の骨片:跛行とMRIの関連(Yorkeら2014)

トウ状骨はトウ嚢とよばれる袋の中に存在し、蹄骨と深屈腱の間に位置しています。アクシデントによる外力や外傷によって骨折がおきることが知られています。 トウ状骨骨折が起きると、中程度から重度の跛行を呈しますが、身体検査では特異的な所見が得られる…

跛行のある馬とない馬におけるトウ状骨遠位の骨片と形状のX線による評価(Biggiら2012)

トウ状骨はトウ嚢とよばれる袋の中に存在し、蹄骨と深屈腱の間に位置しています。アクシデントによる外力や外傷によって骨折がおきることが知られています。 トウ状骨骨折が起きると、中程度から重度の跛行を呈しますが、身体検査では特異的な所見が得られる…

蹄部に痛みのある馬のトウ状骨遠位境界部の骨片に対するMRI所見(Biggiら2011)

トウ状骨はトウ嚢とよばれる袋の中に存在し、蹄骨と深屈腱の間に位置しています。アクシデントによる外力や外傷によって骨折がおきることが知られています。 トウ状骨骨折が起きると、中程度から重度の跛行を呈しますが、身体検査では特異的な所見が得られる…

トウ状骨遠位境界部の骨片とシスト状病変に関連したX線とMRI所見の比較(Biggiら2010)

トウ嚢炎に関連するトウ状骨の骨片所見

トウ状骨の粉砕骨折と深屈腱断裂(Hoegaertsら2005)

トウ状骨の骨折は、慢性跛行の原因となります。 トウ嚢に対して繰り返しステロイド投与を行うことは、深屈腱実質の変性を招くことがあり、注意が必要です。 (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); 参考文献 pubmed.ncbi.nlm.nih.gov 要約 10歳…

トウ状骨骨折の17症例(1982-1992)(Lillichら1995)

トウ状骨はトウ嚢とよばれる袋の中に存在し、蹄骨と深屈腱の間に位置しています。アクシデントによる外力や外傷によって骨折がおきることが知られています。 トウ状骨骨折が起きると、中程度から重度の跛行を呈しますが、身体検査では特異的な所見が得られる…

英国の若齢競走馬における中手骨背側の疾患と調教の要素の関連(Verheyenら2005)

調教初期段階に速いタイムの調教やキャンターの量(距離)を急激に増やすことは、ソエの発生リスクを上昇させます。一方で、徐々にキャンターや速い調教を増やしていくことで、累積の距離が長い馬ではリスクが低くなることがわかっています。 (adsbygoogle =…

外側膝蓋靱帯の超音波検査における正常と異常所見(Gottliebら2016)

膝関節を原因とする跛行のうち、膝蓋靱帯の損傷は多くありません。靱帯損傷の多くは外傷と関連していて、ほとんどで靱帯付着部の骨折を伴うことが報告されています。 膝蓋靱帯は正常な馬でも超音波検査画像は独特な見え方をしますが、重度の跛行を伴う靱帯損…

スタンダードブレッドのP1掌側または底側骨片の摘出時期によるパフォーマンス

サラブレッド競走馬では、第1趾骨底側の骨片は跛行の原因となることがあります。 一方で、スタンダードブレッドではこの所見はよくみられ、骨片摘出がよく行われているようですが、手術前後でパフォーマンスが変化することはなかったと報告されています。 参…

2歳競走馬における中手骨背側の疾患リスクと骨代謝マーカー(Jacksonら2005年)

中手骨背側の骨疾患 若齢の競走馬でよくみられる中手骨背側の骨疾患(DMD)は、小さな骨損傷および骨膜炎を主体とする病態で、疼痛や跛行を伴います。軽微な症状であれば調教は継続できるものの、疼痛や跛行が明らかな場合、治癒を優先させなければいけない状…

後肢P1底側骨片による跛行19症例(Barclay1987)

第1趾骨底側の骨片骨折は跛行の原因となることがあります。 この部位は種子骨靱帯をはじめとした球節後面の安定化を担う靱帯が付着しますが、これらに大きな負荷がかかると裂離骨折が発生します。 このタイプの骨折は後肢に多く発生し、1歳せりのレポジトリ…

12頭のサラブレッド競走馬における第三中手骨骨幹端完全骨折と関連した先行する病変(Grayら2017)

第三中手骨背側には運動により骨が圧迫され、たわむような負荷がかかります。繰り返し負荷がかかることで骨の修復できる以上の障害が続くと骨膜炎が生じ、さらに繰り返しの負荷が継続するとやがて疲労骨折を起こしてしまいます。 特に育成期にはよくみられる…

第三中手骨皮質骨疲労骨折に対する骨穿刺術を行った28頭の追跡調査(Hanieら1992)

第三中手骨背側には運動により骨が圧迫され、たわむような負荷がかかります。繰り返し負荷がかかることで骨の修復できる以上の障害が続くと骨膜炎が生じ、さらに繰り返しの負荷が継続するとやがて疲労骨折を起こしてしまいます。 特に育成期にはよくみられる…

サラブレッド競走馬の第三中手骨背側皮質骨折に対する外科的治療53例(Cervantesら1992)

第三中手骨背側には運動により骨が圧迫され、たわむような負荷がかかります。繰り返し負荷がかかることで骨の修復できる以上の障害が続くと骨膜炎が生じ、さらに繰り返しの負荷が継続するとやがて疲労骨折を起こしてしまいます。 特に育成期にはよくみられる…

第三中手骨の背側皮質不完全骨折に対する骨穿刺術11頭の成績(Spechtら1990)

第三中手骨背側には運動により骨が圧迫され、たわむような負荷がかかります。繰り返し負荷がかかることで骨の修復できる以上の障害が続くと骨膜炎が生じ、さらに繰り返しの負荷が継続するとやがて疲労骨折を起こしてしまいます。 特に育成期にはよくみられる…

サラブレッド競走馬の第三中手骨背側疲労骨折に対する螺子固定56頭の成績(Dallapら1999年)

第三中手骨背側には運動により骨が圧迫され、たわむような負荷がかかります。繰り返し負荷がかかることで骨の修復できる以上の障害が続くと骨膜炎が生じ、さらに繰り返しの負荷が継続するとやがて疲労骨折を起こしてしまいます。 特に育成期にはよくみられる…

第三中手骨背側皮質骨の疲労骨折に対する螺子固定116頭(Jalimら2010)

第三中手骨背側には運動により骨が圧迫され、たわむような負荷がかかります。繰り返し負荷がかかることで骨の修復できる以上の障害が続くと骨膜炎が生じ、さらに繰り返しの負荷が継続するとやがて疲労骨折を起こしてしまいます。 特に育成期にはよくみられる…

第三中手骨背側皮質骨の疲労骨折に対する治療法

背側皮質骨の疲労骨折 馬の第三中手骨は、管骨と呼ばれる骨です。 第三中手骨背側(正面)に骨と同じような硬い腫脹ができると、ソエや管骨骨膜炎と呼ばれます。骨に微細な障害が起き、修復する過程で骨増生が起きることで、硬い腫れが触れるようになります…

スタンダードブレッド競走馬におけるP1矢状不完全骨折の治療前後のパフォーマンス比較(Tetensら1997)

P1矢状不完全骨折について P1の短い不完全骨折は疲労性傷害との関連が示唆されています。詳しくは以下の記事から equine-reports.work equine-reports.work equine-reports.work (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); 短い矢状骨折であっても…

3頭の競走馬におけるP1骨折前駆病変を疑う臨床および画像所見(Ramzanら2010)

調査でわかったこと 2010年にニューマーケットのRossdaleのグループから発表された症例報告。3頭の現役平地サラブレッド競走馬が速い調教後に跛行した。跛行グレードは1-2/10と軽度で、全ての症例で球節の屈曲痛や関節の腫脹はなく、P1近位背側の軽度な触診…

競走馬におけるP1掌側または底側面の骨軟骨片(Whittonら1994)

第一指(趾)骨の掌側(底側)骨片 第一指(趾)骨の掌側(底側)に発生する骨軟骨片は、靱帯付着部に発生します。球節に大きな捻転負荷がかかることで、靱帯が付着している部分がちぎれてしまう捻除骨折と考えられています。 この骨折は、関節や骨が未熟な…