トウ状骨はトウ嚢とよばれる袋の中に存在し、蹄骨と深屈腱の間に位置しています。アクシデントによる外力や外傷によって骨折がおきることが知られています。
トウ状骨骨折が起きると、中程度から重度の跛行を呈しますが、身体検査では特異的な所見が得られることは多くありません。蹄の熱感、蹄叉の打診痛または鉗圧痛、指動脈の強勢などがみられることがあります。
一方で、トウ状骨の辺縁に発生する小さな骨片も見られることがあります。X線検査ではスカイビュー像が最も診断に優れると考えられますが、骨や他の軟部組織との重なりがあること、辺縁全ての面を観察できないことから限界があります。また、この所見はときどき、臨床症状との関連がないこともあります。したがってより慎重な判断が必要となります。
X線検査と、より診断に優れるMRI検査を比較した調査がいくつか行われています。これによるとX線検査によるトウ状骨辺縁の骨片所見の検出は、感度は低いものの特異度は高い検査であることが示唆されています。X線で異常所見が得られた場合には、MRIではより重度な異常所見が見られるかもしれません。
参考文献
要約
研究を行った理由
馬の蹄部を評価するための従来のCRおよびDRの正確性に関するデータはまったくない。
目的
トウ状骨の遠位境界部の骨片を検出するための従来のフィルムやCRとMRIを比較すること、X線検査で検出されやすい骨片のタイプがどれか明らかにすること。
方法
蹄部を原因とする跛行で、X線検査と高磁場MRI検査の両方を行った前肢跛行の馬を組み入れた。X線検査が従来の方法(グループA)か、CR(グループB)かで群分けした。遠位境界部の骨片がある場合は記録した。MRIでは、遠位の骨片を大きさと横にあるトウ状骨との信号強度の変化に基づいてグレード分類した。MRIをゴールドスタンダードとして、従来のX線検査とCRによる骨片の検出感度および特異度を算出した。トウ状骨遠位境界部の骨片について、特定のX線所見とMRI所見の関連を検証するためにχ二乗検定を用いた。
結果
グループAにおいて、MRIでは46、従来のX線画像では18の骨片が同定できた。グループBでは、MRIで45、CRで17の骨片が見えた。従来のX線検査とCRとの間に有意差はなかった。グレード4か5もしくは大型の骨片が最もよくみられ、低グレードの骨片は多くなかった。MRIとX線画像におけるトウ状骨遠位境界部の異常像には有意な相関があった。
結論
従来のX線検査とCRはトウ状骨遠位境界部の骨片を検出する感度は比較的低いが同様であった。しかし、特異度は高かった。大型でグレードの高い骨片はX線検査で見つかりやすかった。
潜在的関連性
X線検査で検出できる骨片は、他の病的な所見と関連することが多い。
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