トウ状骨はトウ嚢とよばれる袋の中に存在し、蹄骨と深屈腱の間に位置しています。アクシデントによる外力や外傷によって骨折がおきることが知られています。
トウ状骨骨折が起きると、中程度から重度の跛行を呈しますが、身体検査では特異的な所見が得られることは多くありません。蹄の熱感、蹄叉の打診痛または鉗圧痛、指動脈の強勢などがみられることがあります。
一方で、トウ状骨の辺縁に発生する小さな骨片も見られることがあります。X線検査ではスカイビュー像が最も診断に優れると考えられますが、骨や他の軟部組織との重なりがあること、辺縁全ての面を観察できないことから限界があります。また、この所見はときどき、臨床症状との関連がないこともあります。したがってより慎重な判断が必要となります。
骨片が跛行とは必ずしも結びつかないことの要因の一つに、多くは両側で見つかる点が挙げられます。画像診断のみで「一方は跛行の原因になる所見だが、他方は跛行の原因にはならない」と判断することは困難を極めます。
ある調査では、この小さな骨片はどの時期にどうやって形成されるのかについてヒントとなるかもしれない報告がなされています。ベルギー温血種の若くて跛行のない馬のX線画像を回顧的に調査したところ、トウ状骨の近位関節面の形状とコッペンの有無には関連があることが示唆されました。このことから、骨に負担のかかりやすい特殊な形状であることが骨片形成と関わっているかもしれないと考察されています。対象馬に跛行がなく、臨床症状との関わりは不明です。
参考文献
要約
目的
温血種のトウ状骨の遠位骨片と近位関節面の形状および他のX線所見との関連があるか調査すること。
方法
種牡馬になるために来院した正常で若い馬325頭の前肢蹄部のX線検査を回顧的に調査した。
結果
650のトウ状骨近位関節面は以下の通り分類した。直線状straight(278)、でっぱった湾曲convex(184)、起伏があるundulating(147)、凹んだ湾曲concave(41)であった。遠位境界部の骨片は57(8.8%)みられた。近位関節面の形状がconcave(9/41;22%)またはundulating(19/147;13%)のほうが、straight(17/278;6%)やconvex(12/184;7%)よりも骨片の所見率が有意に高かった。他に有意な関連はみられなかった。
臨床的意義
仮説の通り、骨の形状と骨片の関連がわかった。トウ状骨にかかる生体力学的な力のかかり方は形状に依存することが想定され、トウ状骨に不適切な負荷がかかったことにより遠位の骨片ができたかもしれない。
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