育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

球節炎

第三中手骨の軟骨下骨嚢胞病変に対する外科的治療、15頭の成績1986ー1994年(Hoganら1997)

球節の軟骨下骨嚢胞は第一指/趾骨または第三中手/中足骨に関連してみられることが知られています。若い馬に多くみつかり、軽度から中程度の跛行を示すものの、関節の腫脹を伴う症例が多くないことが特徴です。診断麻酔後にX線検査を行うことで発見されること…

第三中手骨矢状稜遠位のOCD診断と治療(Wrightら2014)

球節の、特に第三中手骨矢状稜遠位のOCDは、跛行の原因となることがあります。 球節内のOCDは多く報告されていて、第三中手または中足骨では矢状稜またはそれに隣接する顆の部分に限られて、欠損しているように見えます。この病変は前肢よりも後肢の方がよく…

繫靱帯脚炎の超音波、CT、MRI、剖検所見(Elemmawyら2019)

競走馬の繫靱帯脚炎 種子骨炎に関連した繫靱帯脚炎は育成期から競走期にかけてよくみられます。 十分な休養と運動制限を組み合わせたリハビリを経ることで、良好な治療成績を得ることができます。また、近年では繫靱帯脚部辺縁損傷に対して、損傷部分をトリ…

スタンダードブレッドのP1掌側または底側骨片の摘出時期によるパフォーマンス

サラブレッド競走馬では、第1趾骨底側の骨片は跛行の原因となることがあります。 一方で、スタンダードブレッドではこの所見はよくみられ、骨片摘出がよく行われているようですが、手術前後でパフォーマンスが変化することはなかったと報告されています。 参…

後肢P1底側骨片による跛行19症例(Barclay1987)

第1趾骨底側の骨片骨折は跛行の原因となることがあります。 この部位は種子骨靱帯をはじめとした球節後面の安定化を担う靱帯が付着しますが、これらに大きな負荷がかかると裂離骨折が発生します。 このタイプの骨折は後肢に多く発生し、1歳せりのレポジトリ…

球節滑膜パッド増生に対するレーザー摘出11症例(Murphyら2001)

球節背側の滑液嚢 若い馬にみられる球節背側の滑膜パッド内の骨軟骨片は、偶発的な所見であることが多く、関節内の異常所見がみられないことがほとんどです。 一方で、高齢の馬で見られる滑膜パッド内の骨片は少ないものの、跛行と関連していて、関節内の疾…

前肢球節における滑膜パッドの線維性増殖63症例(Dabareinerら1996年)

球節背側の滑液嚢 若い馬にみられる球節背側の滑膜パッド内の骨軟骨片は、偶発的な所見であることが多く、関節内の異常所見がみられないことがほとんどです。 一方で、高齢の馬で見られる滑膜パッド内の骨片は少ないものの、跛行と関連していて、関節内の疾…

温血種における滑膜パッド内の骨軟骨片(Declercqら2008)

球節背側の滑液嚢 若い馬にみられる球節背側の滑膜パッド内の骨軟骨片は、偶発的な所見であることが多く、関節内の異常所見がみられないことがほとんどです。 一方で、高齢の馬で見られる滑膜パッド内の骨片は少ないものの、跛行と関連していて、関節内の疾…

特発性の関節内出血8症例(Vallanceら2012)

特発性の関節内出血は、腕節もしくは飛節にみられ、調教後の急性跛行のまれな原因の一つであることが報告されています。原因が不明な特発性疾患で、関節の病理組織学的検査では慢性的な滑膜過形成、ヘモジデリン沈着、肉芽腫性炎症の所見がみられました。 ほ…

P1近位背側の局所的な放射性医薬品取り込み増加(Baileyら2007)

P1背側の骨代謝と疾患 P1近位背側は、球節の背側に位置しています。肢が着地してから球節が伸展する間に、P1背側には大きな負荷がかかります。これにより骨では活発な代謝が起こるほか、損傷が蓄積して修復が追い付かなかった場合には疲労骨折などの疾患が引…

スタンダードブレッド競走馬におけるP1矢状不完全骨折の治療前後のパフォーマンス比較(Tetensら1997)

P1矢状不完全骨折について P1の短い不完全骨折は疲労性傷害との関連が示唆されています。詳しくは以下の記事から equine-reports.work equine-reports.work equine-reports.work (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); 短い矢状骨折であっても…

3頭の競走馬におけるP1骨折前駆病変を疑う臨床および画像所見(Ramzanら2010)

調査でわかったこと 2010年にニューマーケットのRossdaleのグループから発表された症例報告。3頭の現役平地サラブレッド競走馬が速い調教後に跛行した。跛行グレードは1-2/10と軽度で、全ての症例で球節の屈曲痛や関節の腫脹はなく、P1近位背側の軽度な触診…

競走馬におけるP1掌側または底側面の骨軟骨片(Whittonら1994)

第一指(趾)骨の掌側(底側)骨片 第一指(趾)骨の掌側(底側)に発生する骨軟骨片は、靱帯付着部に発生します。球節に大きな捻転負荷がかかることで、靱帯が付着している部分がちぎれてしまう捻除骨折と考えられています。 この骨折は、関節や骨が未熟な…

MRIで診断したP1矢状溝部骨損傷に対する保存と外科療法の比較(Lipreriら2018)

P1矢状溝部の軟骨下骨損傷はX線検査での診断が難しく、MRIの特徴的な所見で診断される。この損傷による跛行に対する治療法やその予後についてはまだ報告が少ない。 equine-reports.work (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); equine-reports.…

馬の第一指骨傍矢状骨折に対するリニアまたはトライアングル法のスクリュー固定の生体外における比較(Labensら2019)

P1矢状骨折に対する整復方法はどれが優れているのか。 equine-reports.work equine-reports.work equine-reports.work 調査で分かったこと P1矢状骨折の整復方法について、リニア法とトライアングル法を生体外の実験で比較した研究。 解剖体を用いてP1矢状骨…

英国サラブレッドのP1矢状骨折に対するリニアとトライアングル法によるスクリュー固定63症例の成績

P1矢状方向の骨折(いわゆる縦方向の骨折)の内固定方法は、関節面に近いほうを背側と掌側に2本のスクリューを設置するトライアングル法が近年の主流となっています。 しかし、臨床成績を比較した調査はこれまで行われていませんでした。 equine-reports.wor…

MRIで診断した温血種馬のP1矢状溝部の損傷(Goldら2017)

P1矢状溝部の損傷は、X線検査で検出することが難しく、MRIで特徴的な所見があることがわかっています。 equine-reports.work equine-reports.work P1矢状溝部の損傷とその予後について、温血種の乗馬について追跡調査した結果。 ほとんどの馬で保存療法が選…

馬の軟骨下骨損傷診断にMRIを用いた11症例(Zubrodら2004)

関節を原因とする跛行と特定できているのにX線検査では診断できない(明確な所見が得られない)ときにはMRI検査が有効です。 特に軟骨下骨の損傷はMRIでみられる特定のパターンがあり、X線検査ではこれを検出することが難しいことがわかっています。 単純X線…

競走用でない馬のP1不完全骨折をX線とCTで評価した(Brünisholzら2015)

P1不完全骨折と診断した競走用でない馬におけるX線とCT検査を用いた骨折線の評価を行った報告です。 調査対象となったのは、ほとんどは温血種で、サラブレッドよりも少し大きいサイズ(平均576kg)、年齢は平均9.5歳でした。 CT検査では骨折形状をより詳細に…

第三中手骨遠位掌側の疲労骨折:診断は難しいが予後は良い(Shanら2022)

球節の少し上、第三中手骨の遠位掌側には横方向の疲労骨折が発生することがあります。この骨折は程度が様々な跛行を呈し、球節の捻挫のような軟部組織の腫脹を伴うことが多いですが、他の疲労骨折と同様に初診時のX線検査では明瞭な病変が検出できないことが…

非競走馬におけるP1短矢状骨折に対する螺子固定による骨接合術の長期成績(Brynerら2020)

先日紹介した乗用馬におけるP1の短矢状骨折の治療成績においては、外科的な治療を選択することで運動復帰できる可能性があることが示唆されました。 equine-reports.work 2020年に発表された温血種を主とする乗用馬の治療成績の報告では、31頭中27頭がもとの…

競走用でない馬のP1短矢状骨折(Kuemmerleら2008年)

球節を構成する第一指(趾)骨(P1)における矢状骨折は競走馬に多く発生しますが、乗用馬にも発生することがあります。 なかでも短い矢状骨折については、軟骨下骨の骨硬化やシスト状病変を伴うことがあることがあることが報告されています。保存療法では跛…

球節背側骨片骨折に対する非外科と外科処置の競走成績(Ramzanら2020)

背景とはじめに 調査でわかったこと 参考文献 背景とはじめに 球節背側の骨片は、1回の大きな負荷もしくは慢性的な繰り返し負荷によるリモデリングから二次的に発生する可能性があります。 この骨片に対する治療は、外科的に摘出する方法とその成績が報告さ…

球節の骨片骨折に対する非外科と外科的処置(Ramzanら2020)

背景とはじめに 球節背側の骨片は、前肢でP1背内側に最も発生しやすく、偶発所見の場合もあれば、関節腫脹や跛行を伴うこともあります。1回の大きな負荷もしくは慢性的な繰り返し負荷によるリモデリングから二次的に発生する可能性があります。 この骨片に対…

調教中の若いサラブレッドの関節損傷リスクは運動に影響される(Reedら2013)

英国の競走馬における調査では、ある程度の頻度でキャンター調教を行えている馬は腕節や球節の損傷リスクが低くなる一方で、高速調教の距離が増えると画像診断で明らかな骨折や関節損傷を示す像が得られるリスクが増加するようです。 とはいえ、トレーナーご…

英国競走馬における第一指骨近位背側骨軟骨片の発生分布(Walshら2018)

はじめに 様々な血統や用途の馬において、球節内の骨片骨折は背内側に多く発生することが報告されています。球節に骨折した場合には骨片は角がありますが、慢性または陳旧性の骨片は角がとれた丸い形をしています。 研究でわかったこと 英国におけるサラブレ…

球節に起因する跛行の馬にみられる低磁場MRI所見131頭(Powell2012)

球節領域の損傷はさまざまな病態があり、微小な変化は単純X線検査だけでは検出できない可能性があります。MRIでは、骨折や骨軟骨損傷に関連した信号パターンが続々と明らかにされてきています。 (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); はじめ…

第一趾骨近位底側骨片の関節鏡視下除去23頭(Simonら2004年)

第一趾骨底側の骨片は、若齢馬で症状を伴わないOCのような症状としてみられる骨軟骨片もあれば、運動負荷が増大して付着する靱帯から受ける力によって裂離骨折を起こすこともあります。 後肢での発生が多いこの骨折に対し、スタンダードブレッド競走馬におけ…

近位種子骨軸側骨炎8症例(Dabareinerら2001)

文献でわかったこと 種子骨軸側の骨炎は、X線DP像での種子骨の透過領域に基づいて診断されます。また、超音波検査では種子骨間靭帯および種子骨軸側辺縁の骨の輪郭を評価することが可能です。 診断麻酔で球節内または指屈腱鞘内への麻酔を行って確定しました…

近位種子骨軸側辺縁骨髄炎の7例(Winsterら1991年)

はじめに 文献で分かったこと 診断のために 参考文献 はじめに 近位種子骨は球節掌側に位置し、内と外に一つずつあり、近位には繫靱帯脚部、遠位には4つの種子骨靱帯が付着しています。 内と外の種子骨をつなぐ構造として、種子骨間靱帯があります。この靱帯…