育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

後肢P1底側骨片による跛行19症例(Barclay1987)

 

第1趾骨底側の骨片骨折は跛行の原因となることがあります。

この部位は種子骨靱帯をはじめとした球節後面の安定化を担う靱帯が付着しますが、これらに大きな負荷がかかると裂離骨折が発生します。

このタイプの骨折は後肢に多く発生し、1歳せりのレポジトリ検査でもよくみられる所見のひとつです。若い馬では保存療法を選択して骨片が安定化すれば、良好なパフォーマンスを発揮することができます。一方で、育成や競走馬がこの骨片骨折を発症し、跛行を呈する場合には外科的な治療が選択されることが多いです。保存療法では出走できた馬が少なかったことが報告されています。

 

参考文献

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

要約

19頭の馬で、P1底側の骨片骨折が後肢跛行の原因と診断された。高強度の運動で跛行が明らかで、関節内麻酔または局所麻酔によって球節が原因であると確定された。10頭は骨片を外科的に切除し、のちに完全な用途に復帰した。7頭は関節内にPS-GAGまたは糖質コルチコイドを投与したが、1頭のみ復帰できた。1頭は診断時点で引退となった。P1の底側骨片を外科的に切除することは最も効果的な治療法である。内科的治療はパフォーマンスを低下させるがそれでも有効な方法である。