育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

第一趾骨近位底側骨片の関節鏡視下除去23頭(Simonら2004年)

第一趾骨底側の骨片は、若齢馬で症状を伴わないOCのような症状としてみられる骨軟骨片もあれば、運動負荷が増大して付着する靱帯から受ける力によって裂離骨折を起こすこともあります。

後肢での発生が多いこの骨折に対し、スタンダードブレッド競走馬における治療成績が報告されています。これによると、出走歴があった8頭中7頭は競走に復帰できたとのことでした。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

目的

 第一趾骨近位底側面の軸側骨軟骨片の関節鏡視下で電メスによる切除を行った後の成績を記述すること。

 

研究デザイン

 回顧的調査

 

集団

 23頭のスタンダードブレッド競走馬

 

方法

 第一趾骨の近位底側骨軟骨片に対して関節鏡視下での電メスを用いた切除手術を行ったスタンダードブレッド競走馬の医療記録を調査した。仰臥位に保定し、1.5%グリシン溶液を用いて関節を膨らませた。関節鏡ポートは近位底側の関節パウチに作り、骨片に対して同側または対側からトライアングル法を用いた。線維組織付着部はループ型またはフック型の電メスを用いて切り離した。追跡調査は、馬主または調教師への電話ききとりまたは競走成績の調査によりおこなった。

 

結果

 28関節(前肢14、後肢14)から33の骨軟骨片を摘出した。術中および術後の大きな合併症はおきなかった。術前に出走歴のあった8頭のうち7頭(79%)は術後に競走復帰した。術前に出走歴のなかった馬では、4頭(36%)が術後に出走した。

 

結論

 第一趾骨近位底側面の軸側骨軟骨片に対する関節内の電メスを用いた切除術は安全に実施でき、従来の切除術に替わるものとなる。

 

臨床的関連性

 第一趾骨近位底側の軸側骨軟骨片を除去するにあたり、関節鏡視下で電メスを用いた方法は妥当な代替法である。くわえて、仰臥位に保定することで、複数の関節から複数の骨片を除去することが可能である。