育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

外掌側手根骨間靱帯の剥離骨折の所見率と外科治療への反応(Beinlichら2005)

はじめに 文献で分かったこと はじめに 馬の手根関節掌側にある靭帯は、主に内掌側手根骨間靭帯と、外掌側手根骨間靭帯があります。 内掌側靭帯は損傷や裂離骨折が多く報告されています。この靭帯は、橈側手根骨遠位外側面に起始し、第三手根骨近位掌内側と…

大腿骨第三転子の異常所見20頭(Shields 2015年)

大腿骨外側面に位置する第三転子は、浅臀筋、大腿筋膜張筋、大腿方形筋などが付着する部位で、主に外傷(外力)によって骨折することが多いと考えられていて、原因の多くは点頭や馬房、扉、ゲートなどにぶつかることが挙げられています。 完全に骨片が離断し…

外掌側手根骨間靱帯の剝離骨折の特徴とX線所見(Beinlichら2004)

尺側手根骨には、骨片様の像が見られることがあります。背外-掌内斜位像は、レポジトリ検査やルーチンなX線検査でも撮影される像ですが、これにより骨片の形状がよく評価できます。また、背掌側像では骨片がどの位置にあるか把握する助けとなります。 手根骨…

手根骨間靱帯損傷の重症度と所見率(KannegieterらAVJ1993)

手根骨間靱帯の損傷は、関節鏡視下で確認できるようになりました。 この疾患は、超音波検査やX線検査では診断することが難しいです。靱帯付着部の裂離骨折ではX線検査で骨片が写ることがあります。 関節鏡手術では41%の関節において、軽度から重度の手根骨…

第三中手骨背側皮質骨の斜矢状方向の不完全骨折(Wattら1998年)

若齢競走馬では、様々な形状の疲労骨折が発生する可能性があります。 管骨の疲労骨折は、X線側方像でよく診断される背側皮質骨の斜め方向の罅裂骨折が一般的ですが、まれにX線掌背側方向(正面像)の撮影で診断できる斜め矢状方向への骨折も発生するようです…

腕節掌側の骨軟骨片に対する関節鏡視下骨片摘出25頭(Langら2015)

腕節掌側の骨折は、前腕手根関節に最も発生していた。橈側手根骨近位関節面に最も多く、次に副手根骨に発生していた。関節鏡視下で除去することが可能で、多くの症例が術後に跛行が見られず意図した運動に復帰することができた。 pubmed.ncbi.nlm.nih.gov 目…

競走馬の腕節掌側骨片31例(GetmanらJAVMA2006)

腕節掌側に小さな塵のように見える骨片は、掌側の骨体に由来するよりもむしろ、関節全体の損傷程度を示唆する所見である可能性がある。 手根骨掌側には手根骨間靭帯などが付着していて、関節を安定化させる作用がある。この付着部で裂離骨折する場合、より大…

スタンダードブレッド競走馬における上腕骨のリモデリングと疲労骨折(Krausら2005年)

上腕骨のリモデリングや疲労骨折は、致命的で重篤な骨折に繋がる可能性があります。 若齢の馬において、これらの変化が起きやすいことが知られています。 スタンダードブレッド競走馬においても、上腕骨疲労骨折は未出走の馬で発生しやすいことが分かりまし…

腕節掌側の骨折10頭(WilkeらJAVMA2001)

全身麻酔からの覚醒後に跛行し、橈側手根骨掌側の骨片骨折が判明した症例が大部分を占めたこの調査では、保存療法では復帰できず、関節鏡手術でも元通りの運動に復帰することは難しかった。 通常の運動によって発症する骨折とは性質が違うのかもしれない。背…

第一指(趾)骨掌側/底側の軸側骨片に対する関節鏡視下除去手術119頭(Fortierら1995)

第一指(趾)骨の掌側または底側の軸側にみられる骨軟骨片は、近年のレポジトリ検査の普及により、若齢馬で多く見つかっています。 第一指(趾)骨の近位掌側は、軸側よりに十字種子骨靭帯、反軸側に短種子骨靭帯が付着し、さらに反軸側に関節および種子骨の…

カリフォルニアの競走馬における脛骨完全骨折の特徴(Samolら2021年)

競走馬の脛骨骨折は、ほとんどが粉砕骨折で、内固定による整復や支持を行うことが困難で予後不良と判断されるケースが非常に多い骨折です。 この骨折部位は、疲労骨折もよく発生することが知られています。疲労骨折の特徴は、競走馬としてキャリアの浅い、デ…

近位指節間関節後面の骨軟骨片の関節鏡下摘出4頭(Radcliffeら2008)

近位指節間関節は、第一指骨と第二指骨の関節で、繫関節とも呼ばれます。 掌側には、反軸側には浅屈腱が付着し、軸側には掌側靱帯などが付着しています。また、第一指骨側に関節包が大きく付着しています。 この関節内の骨片は跛行の原因となることがあり、…