育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

骨嚢胞(ボーンシスト)

大腿骨内側顆ボーンシストに対する成長因子で刺激した軟骨細胞移植:49症例の回顧的調査(Ortvedら2012)

ボーンシストに対する搔爬術は跛行の程度を改善するために有効な治療法であることが示されてきました。しかし大きなボーンシストの病変では治療成績が思うように向上してきませんでした。 これまでの搔爬術では成績の改善に限界がありました。それは関節軟骨…

馬の大腿骨内側顆ボーンシストを超音波検査で診断する(Jacquetら2007)

超音波検査は関節内の軟部組織を評価するのに優れています。軟骨、靭帯のほか、膝関節にしかない半月板も一部は評価することができます。特に大きな関節になればなるほど、超音波で評価できる領域が増えます。 一般的に関節荷重面は評価することが難しく、こ…

大腿骨内側顆のボーンシストに対する関節鏡下デブリードメント後の成績に年齢が与える影響:1993-2003年の86症例(Smithら2005年)

関節鏡による大腿骨内側顆のボーンシスト搔爬術はいくつかの成績が報告されています。AAEP2002年にSandler先生が発表した時には、関節鏡で搔爬するシストの大きさが小さいほど復帰率が高いことが報告されました*1。このことから関節面を温存することが大事か…

馬におけるボーンシスト:病因、診断および治療オプション(McIlwraithら1998)

1998年にコロラド州立大のMcIlwaith先生がまとめられたボーンシストについてのまとめです。少し古めの記事ですが、過去にどのように報告されてきたか、関節ごとにまとめられています。それぞれについて診断や治療オプションについても記載されています。 病…

サラブレッド1歳と2歳せりにおける大腿骨内側顆のボーンシスト:所見率、進行及びパフォーマンスとの関連(Peatら2024年)

競走馬のせりではレポジトリ検査として喉頭内視鏡検査とX線検査の結果が公開されています。様々なX線所見が得られ、それが将来的な競走成績にどう影響するのかは関心の高い領域ですが、まだわかっていないことも多いのが現状です。 軽種馬におけるレポジトリ…

大腿骨内側顆の軟骨下骨嚢胞に対する治療オプションと長期成績に関するレビュー(Santschiら2021)

大腿骨内側顆の骨嚢胞は跛行とパフォーマンスの低下を引き起こす、若い競走馬に多く見られる疾患であり、育成初期に発症することが多く、育成牧場ではよく問題になります。 この疾患に対してはこれまで様々な治療方法が試みられており、報告されてきた成績を…

大腿骨内側顆のボーンシストに対する搔爬術(Whiteら1988)

1988年にまとめられた報告では、ボーンシストに対して関節切開による病変部の搔爬術が行われていました。術創に関するトラブルは思ったほど少なく、跛行の改善が得られる治療法として報告されました。 この報告においても、病変部の搔爬術後に病変部のX線所…

6から18ヶ月齢の馬の膝関節X線所見(Santschiら2020)

大腿骨内側顆の骨嚢胞(ボーンシスト)はどの時期に形成されるのでしょうか。1歳せりではよく見かける所見ですが、当歳の時期からすでに所見があるのでしょうか。日本の日高地方ではせりに向けて1歳の7月から9月に検査が行われるため、3月から4月に生まれた…

第三中手骨の軟骨下骨嚢胞病変に対する外科的治療、15頭の成績1986ー1994年(Hoganら1997)

球節の軟骨下骨嚢胞は第一指/趾骨または第三中手/中足骨に関連してみられることが知られています。若い馬に多くみつかり、軽度から中程度の跛行を示すものの、関節の腫脹を伴う症例が多くないことが特徴です。診断麻酔後にX線検査を行うことで発見されること…

蹄骨の軟骨下骨嚢胞の関節鏡下掻爬術11頭1994ー2000年(Storyら2004)

蹄骨の軟骨下骨嚢胞は跛行の原因となることがあり、保存療法でも比較的良好な予後が得られることは前回の記事で紹介しました。 equine-reports.work しかしながら、保存療法で跛行が消えない場合には、関節鏡下での搔爬術が考慮されます。 pubmed.ncbi.nlm.n…

蹄骨シスト状病変のX線による診断、保存療法、競走成績(Peterら2018)

蹄骨のシスト状病変は、まれに跛行の原因となることがあります。 多くは触診上で蹄を疑う所見はあまり得られないため、診断麻酔によって疼痛部位が特定され、画像診断により検出されます。 これまでに小頭数の報告がなされており、関節内への投薬を含む保存…

CTは肘の跛行における病変を検出する画像診断技術である:99頭139関節の調査(Zimmermanら2022年)

肘関節を原因とする跛行は多くないものの、まれに橈骨近位や上腕骨遠位の関節面に形成される骨病変が跛行の原因として検出されることがあります。 身体検査で肘や肩の関節が腫れていることを確認することは難しく、屈曲痛を示さず、屈曲試験に反応しないこと…

第三中手骨矢状稜遠位のOCD診断と治療(Wrightら2014)

球節の、特に第三中手骨矢状稜遠位のOCDは、跛行の原因となることがあります。 球節内のOCDは多く報告されていて、第三中手または中足骨では矢状稜またはそれに隣接する顆の部分に限られて、欠損しているように見えます。この病変は前肢よりも後肢の方がよく…

ベルギー温血種におけるトウ状骨の骨片と形状の関連(Claerhoudtら2011)

トウ状骨はトウ嚢とよばれる袋の中に存在し、蹄骨と深屈腱の間に位置しています。アクシデントによる外力や外傷によって骨折がおきることが知られています。 トウ状骨骨折が起きると、中程度から重度の跛行を呈しますが、身体検査では特異的な所見が得られる…

トウ状骨遠位の骨片:跛行とMRIの関連(Yorkeら2014)

トウ状骨はトウ嚢とよばれる袋の中に存在し、蹄骨と深屈腱の間に位置しています。アクシデントによる外力や外傷によって骨折がおきることが知られています。 トウ状骨骨折が起きると、中程度から重度の跛行を呈しますが、身体検査では特異的な所見が得られる…

跛行のある馬とない馬におけるトウ状骨遠位の骨片と形状のX線による評価(Biggiら2012)

トウ状骨はトウ嚢とよばれる袋の中に存在し、蹄骨と深屈腱の間に位置しています。アクシデントによる外力や外傷によって骨折がおきることが知られています。 トウ状骨骨折が起きると、中程度から重度の跛行を呈しますが、身体検査では特異的な所見が得られる…

蹄部に痛みのある馬のトウ状骨遠位境界部の骨片に対するMRI所見(Biggiら2011)

トウ状骨はトウ嚢とよばれる袋の中に存在し、蹄骨と深屈腱の間に位置しています。アクシデントによる外力や外傷によって骨折がおきることが知られています。 トウ状骨骨折が起きると、中程度から重度の跛行を呈しますが、身体検査では特異的な所見が得られる…

トウ状骨遠位境界部の骨片とシスト状病変に関連したX線とMRI所見の比較(Biggiら2010)

トウ嚢炎に関連するトウ状骨の骨片所見

大腿骨内側顆の軟骨下骨嚢胞と併発または続発した脛骨の軟骨下骨病変(Bonillaら2016)

成馬における脛骨の軟骨下骨病変は、慢性的な骨関節炎に併発してみられることがあります。そして、しばしば大腿骨の軟骨下骨病変を伴います。 半年以上の慢性後肢跛行を呈した、大腿脛骨関節の慢性関節炎の症例4頭の治療成績が報告されています。これらの症…

脛骨近位の軟骨下骨嚢胞12症例1983-2000年(Textorら2001)

脛骨近位の軟骨下骨嚢胞所見は、若い馬では骨軟骨症に関連すると考えられる病変もある一方で、運動している成馬では大腿脛骨関節の骨関節炎および大腿骨の骨軟骨病変と併発してみられることがあります。 若馬の骨軟骨炎(OA)に関連すると考えられる軟骨下骨病…

MRIで診断したP1矢状溝部骨損傷に対する保存と外科療法の比較(Lipreriら2018)

P1矢状溝部の軟骨下骨損傷はX線検査での診断が難しく、MRIの特徴的な所見で診断される。この損傷による跛行に対する治療法やその予後についてはまだ報告が少ない。 equine-reports.work (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); equine-reports.…

橈骨近位内側の軟骨下骨透過領域に対するスクリューによる治療8例(Roquetら2017)

はじめに 軟骨下骨嚢胞は大腿骨内側顆に比較的よくみられ、レポジトリ検査では膝関節において多く見られる所見です。 軽種馬におけるレポジトリーのためのX線検査ガイド (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); 軟骨下骨嚢胞は橈骨近位にも発生…

馬の軟骨下骨損傷診断にMRIを用いた11症例(Zubrodら2004)

関節を原因とする跛行と特定できているのにX線検査では診断できない(明確な所見が得られない)ときにはMRI検査が有効です。 特に軟骨下骨の損傷はMRIでみられる特定のパターンがあり、X線検査ではこれを検出することが難しいことがわかっています。 単純X線…

大腿骨内側顆の軟骨病変の跛行の原因としての評価11例(Schneiderら1997年)

調査で分かったこと 大腿骨内側顆は軟骨下骨嚢胞の好発部位ですが、軟骨のみの病変でも跛行の原因となることが明らかとなっています。 X線検査で異常が認められなかったものの、関節内麻酔で跛行が消失した症例に対して関節鏡手術を行いました。その結果、軟…

大腿膝蓋関節OCD診断におけるX線と超音波検査の比較

大腿骨滑車稜のOCD 膝関節でOCDの発生が最も多い部位は内側または外側の滑車稜です。X線検査でみえる病変の大きさや範囲、骨片の数などは様々です。関節炎の原因となることがあるほか、跛行を呈すこともあり、なかにはパフォーマンスに影響する場合もありま…

サラブレッド1歳馬のレポジトリ検査でみられる明らかな病変の分布と所見率(Oliverら2008)

ニュージーランドのサラブレッド1歳における飛節と膝関節の骨軟骨病変所見率の調査。

肩甲上腕関節の骨軟骨症32例(Jennerら2008)

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov 目的 馬の肩関節における骨軟骨症に対する外科または保存療法の成績を回顧すること。 方法 2歳未満で肩甲上腕関節に骨軟骨症があると診断した32頭についての回顧的調査。病変の重症度は内外方向のX線画像における計測に基づいた。追…

競走用でない馬のP1短矢状骨折(Kuemmerleら2008年)

球節を構成する第一指(趾)骨(P1)における矢状骨折は競走馬に多く発生しますが、乗用馬にも発生することがあります。 なかでも短い矢状骨折については、軟骨下骨の骨硬化やシスト状病変を伴うことがあることがあることが報告されています。保存療法では跛…

肩関節のわずかな骨軟骨病変の診断所見と関節鏡処置後の予後(Doyleら2000)

肩関節を原因とする跛行は、診断が難しいです。 はじめに 文献でわかったこと 参考文献 はじめに 肩関節の骨病変や軟骨下骨の異常およびOCDは、若馬で跛行の原因となることが報告されています。しかし、臨床現場では、ごくわずかな所見しか得られず、X線検査…