育成馬臨床医のメモ帳

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MRIで診断したP1矢状溝部骨損傷に対する保存と外科療法の比較(Lipreriら2018)

P1矢状溝部の軟骨下骨損傷はX線検査での診断が難しく、MRIの特徴的な所見で診断される。この損傷による跛行に対する治療法やその予後についてはまだ報告が少ない。

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調査で分かったこと

スポーツホースの症例において保存療法と外科的治療を行い、その長期成績を比較した調査。保存療法は舎飼いと徐々に運動を戻す長期的なリハビリ、外科的治療は病変部をまたぐスクリューの設置でした。どちらの治療法においても、約半数が運動に復帰することができた。長期的な成績に明らかな違いはなく、将来的に運動に復帰できるかという予後には注意が必要です。

 

 

 

参考文献

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

要約

目的

 P1近位関節面の軟骨下骨損傷を低磁場MRIで診断したスポーツホースの症例に対して、保存療法と外科的治療を行った治療成績を比較すること。

 

研究デザイン

 回顧的症例集

 

動物

 24頭のスポーツホース。X線検査で明らかな骨折所見が得られず、球節の低磁場MRIにおいてP1近位面の矢状溝軟骨下骨に高信号を認めた。

 

方法

 2010-2017年の期間に、2つの病院に紹介来院した馬の医療記録を調査した。経過、臨床所見、X線検査およびMRI所見、治療方法を記録した。保存療法は、舎飼い休養後に徐々に運動強度を戻した。外科的治療は、P1近位面を横断するスクリュー固定を行った。長期的な成績は、電話による聞き取りおよび臨床検査記録から得た。フィッシャーの正確検定を用いて治療群間の成績を比較した。

 

結果

 本研究において追跡調査が可能であったのは21頭中17頭で、保存療法が8頭、外科的治療が9頭であった。本研究において成績に群間で差はなかった。保存療法の8頭中4頭は歩様がよく、外科的治療の9頭中5頭は歩様がよかった。

 

結論

 保存療法と外科療法にかかわらず、P1の軟骨下骨損傷と診断した馬のおよそ半分が運動復帰した。

 

臨床的意義

 P1軟骨下骨損傷の馬が運動復帰する予後は注意が必要(guarded)である。

 

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