育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

抗菌薬

馬の炎症性腸疾患【IBD】 診断とコルチコステロイドと駆虫薬による治療成績(Kaikkonenら2014)

馬の炎症性腸疾患【IBD】は、腸管にさまざまな炎症細胞が集積する病態の総称です。 主となる細胞や炎症がおよんでいる部位などから、いくつかの病型に分類されます。主なものは、リンパ球ー形質細胞性腸炎(LPE)、肉芽腫性腸炎(GE)、全身性好酸球性上皮親和性…

馬の炎症性腸疾患【IBD】 これまでにわかっていること④ 治療、予後、結論(Vitaleら2022)

治療 治療の目的は、馬が抗原になりうる食べ物、寄生虫および環境要因に暴露されることを少なくすることである。 犬では、治療法が標準化されていて、治療の最初の一歩は食事の変更であり、タンパク質や炭水化物の供給源もしくは市販されている加水分解され…

馬の炎症性腸疾患【IBD】 これまでにわかっていること③ IBDの臨床的および診断的評価その1(Vitaleら2022)

IBD罹患馬の臨床的および診断的評価 多くの臨床家によってIBDの明確な診断ガイドラインが腫脹されたが、筆者の意見では、臨床検査は段階的に進めていくべきで、侵襲の小さい検査から始め、侵襲の大きい検査に進むべきである。IBDは非特異的な臨床症状が特徴…

馬の炎症性腸疾患【IBD】 これまでにわかっていること② IBDの分類各論(Vitaleら2022)

肉芽腫性腸炎(GE) 初めに報告されたIBDのタイプで、この100年で最も多く報告されてきたが、近年では見られなくなってきた。特徴は粘膜固有層レベルでのリンパ球およびマクロファージの浸潤があり、形質細胞や虚細胞の数は様々である。絨毛の萎縮が顕著で、病…

馬の炎症性腸疾患【IBD】 これまでにわかっていること① IBDの分類総論(Vitaleら2022)

はじめに 炎症性腸疾患(IBD)は、ヒトと動物の両方において消化管の炎症の再発を特徴とする衰弱性疾患として記述されている一群の消化管疾患である。馬では、IBDは粘膜や粘膜下織に異なるタイプの炎症性細胞が浸潤するものとして認識され、発症機序はまだ解明…

肺炎により死亡した競走馬の回顧的調査(Carvallloら2017)

輸送に関連した呼吸器疾患、いわゆる輸送熱が増加してきているように感じます。 競走馬にとって出走するにも休養するにも、輸送は避けられないものですが、これは競走馬に多く発生する呼吸器疾患の最大のリスク因子となっています。 レース後すぐに輸送した…

バイオフィルムと馬の脚部の創傷 レビュー その⑤(Jorgensenら2021)

馬の下肢部(前肢なら腕節より下、後肢なら飛節より下)の創傷管理は困難を伴うことがあります。小さな創傷であったとしても治癒遅延がおきやすく、結果的に運動復帰が遅れてしまうことがしばしばあります。 これにはいくつかの要素がかかわっていると考えら…

敗血症性胸膜肺炎97症例の生存に関連する因子(Arroyoら2017)

輸送に関連した肺炎は重篤化する可能性があるため注意が必要です。 発熱、尾翼開帳呼吸、呼吸数増加、胸部痛(動くと痛い、唸る)、沈鬱(頭が下がったまま、飼い葉も食べない)、鼻汁がみられる症例では、胸膜肺炎を疑って早急に治療を開始することが重要で…

バイオフィルムと馬の脚部の創傷 レビュー その④(Jorgensenら2021)

馬の下肢部(前肢なら腕節より下、後肢なら飛節より下)の創傷管理は困難を伴うことがあります。小さな創傷であったとしても治癒遅延がおきやすく、結果的に運動復帰が遅れてしまうことがしばしばあります。 これにはいくつかの要素がかかわっていると考えら…

バイオフィルムと馬の脚部の創傷 レビュー その③(Jorgensenら2021)

馬の下肢部(前肢なら腕節より下、後肢なら飛節より下)の創傷管理は困難を伴うことがあります。小さな創傷であったとしても治癒遅延がおきやすく、結果的に運動復帰が遅れてしまうことがしばしばあります。 これにはいくつかの要素がかかわっていると考えら…

バイオフィルムと馬の脚部の創傷 レビュー その②(Jorgensenら2021)

馬の下肢部(前肢なら腕節より下、後肢なら飛節より下)の創傷管理は困難を伴うことがあります。小さな創傷であったとしても治癒遅延がおきやすく、結果的に運動復帰が遅れてしまうことがしばしばあります。 これにはいくつかの要素がかかわっていると考えら…

バイオフィルムと馬の脚部の創傷 レビュー その①(Jorgensenら2021)

馬の下肢部(前肢なら腕節より下、後肢なら飛節より下)の創傷管理は困難を伴うことがあります。小さな創傷であったとしても治癒遅延がおきやすく、結果的に運動復帰が遅れてしまうことがしばしばあります。 これにはいくつかの要素がかかわっていると考えら…

馬の十二指腸近位空腸炎のレビュー(Arroyoら2018) その⑥

馬の十二指腸-近位空腸炎は、散発的に見られる病態であることが知られています。 臨床的な特徴は急性の小腸のイレウスによる腸管膨張と胃拡張による疝痛です。十二指腸から空腸の内容物が胃へ逆流することにより急激な胃拡張を起こすことで、胃破裂のリスク…

馬の十二指腸近位空腸炎のレビュー(Arroyoら2018) その⑤

馬の十二指腸-近位空腸炎は、散発的に見られる病態であることが知られています。 臨床的な特徴は急性の小腸のイレウスによる腸管膨張と胃拡張による疝痛です。十二指腸から空腸の内容物が胃へ逆流することにより急激な胃拡張を起こすことで、胃破裂のリスク…

馬の十二指腸近位空腸炎のレビュー(Arroyoら2018) その④

馬の十二指腸-近位空腸炎は、散発的に見られる病態であることが知られています。 臨床的な特徴は急性の小腸のイレウスによる腸管膨張と胃拡張による疝痛です。十二指腸から空腸の内容物が胃へ逆流することにより急激な胃拡張を起こすことで、胃破裂のリスク…

馬の十二指腸近位空腸炎のレビュー(Arroyoら2018) その③

馬の十二指腸-近位空腸炎は、散発的に見られる病態であることが知られています。 臨床的な特徴は急性の小腸のイレウスによる腸管膨張と胃拡張による疝痛です。十二指腸から空腸の内容物が胃へ逆流することにより急激な胃拡張を起こすことで、胃破裂のリスク…

馬の十二指腸近位空腸炎のレビュー(Arroyoら2018) その②

馬の十二指腸-近位空腸炎は、散発的に見られる病態であることが知られています。 臨床的な特徴は急性の小腸のイレウスによる腸管膨張と胃拡張による疝痛です。十二指腸から空腸の内容物が胃へ逆流することにより急激な胃拡張を起こすことで、胃破裂のリスク…

化膿性滑膜炎に対する連続的滑液嚢内抗菌薬投与31症例(Lescunら2006)

はじめに 文献で分かったこと はじめに 化膿性滑膜炎は緊急疾患で、感染が見つかり次第、洗浄や抗菌薬投与を行うことが良好な予後に繋がると考えられています。 しかし、何らかの原因で発見が遅れたり、慢性化してしまった場合には、長期的な全身抗菌薬が行…

化膿性滑液嚢炎における細菌培養:細菌は予後に影響するか(Taylorら2010)

化膿性滑液嚢炎は、滑膜への細菌感染を原因とする病態です。 滑液検体から細菌が培養され、さらに薬剤感受性検査まで可能であった症例は、それをもとにした抗菌薬投与治療を行います。しかし、実際には滑液検体から細菌培養陰性となる症例が多く存在します。…

化膿性滑膜炎を疑う症例から分離された細菌の抗菌薬感受性(Miagkoffら2020年)

カナダ、モントリオール大学から発表された、10年にわたる化膿性滑膜炎(疑いを含む)症例について、細菌培養検査と薬剤感受性試験をまとめた調査。 これによると、全体の49%から細菌が分離され、成馬(文献によると6ヵ月以上)では、グラム陽性菌が多く分…

競走馬における起源不明の化膿性滑膜炎(Byrneら2020)

主に当歳など子馬では、ストレスをはじめとするさまざまな原因で免疫機能が低下し、菌血症となった結果、血行性に化膿性滑膜炎が発生すると考えられています。 一方で、成馬では穿孔性の外傷など明らかな原因を伴わない化膿性滑膜炎はまれだと考えられていま…