育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

2024-01-01から1年間の記事一覧

馬の炎症性腸疾患【IBD】 これまでにわかっていること③ IBDの臨床的および診断的評価その1(Vitaleら2022)

IBD罹患馬の臨床的および診断的評価 多くの臨床家によってIBDの明確な診断ガイドラインが腫脹されたが、筆者の意見では、臨床検査は段階的に進めていくべきで、侵襲の小さい検査から始め、侵襲の大きい検査に進むべきである。IBDは非特異的な臨床症状が特徴…

馬の炎症性腸疾患【IBD】 これまでにわかっていること② IBDの分類各論(Vitaleら2022)

肉芽腫性腸炎(GE) 初めに報告されたIBDのタイプで、この100年で最も多く報告されてきたが、近年では見られなくなってきた。特徴は粘膜固有層レベルでのリンパ球およびマクロファージの浸潤があり、形質細胞や虚細胞の数は様々である。絨毛の萎縮が顕著で、病…

馬の炎症性腸疾患【IBD】 これまでにわかっていること① IBDの分類総論(Vitaleら2022)

はじめに 炎症性腸疾患(IBD)は、ヒトと動物の両方において消化管の炎症の再発を特徴とする衰弱性疾患として記述されている一群の消化管疾患である。馬では、IBDは粘膜や粘膜下織に異なるタイプの炎症性細胞が浸潤するものとして認識され、発症機序はまだ解明…

馬における運動誘発性肺出血:北米大学獣医内科によるコンセンサスステートメント⑦ 考察と勧告(Hinchcliffら2015)

EIPHが馬に与える影響について、これまでに行われた調査をワーキンググループが精査してエビデンスを評価したものが公開されています。 (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); EIPHについて考察と勧告 コンセンサスのパネルから言えることは …

馬における運動誘発性肺出血:北米大学獣医内科によるコンセンサスステートメント⑥ フロセミドはパフォーマンスに影響するか(Hinchcliffら2015)

EIPHが馬に与える影響について、これまでに行われた調査をワーキンググループが精査してエビデンスを評価したものが公開されています。 (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); フロセミドがパフォーマンスに影響するか 北米では一般的にレース…

馬における運動誘発性肺出血:北米大学獣医内科によるコンセンサスステートメント⑤ EIPHに効果的な予防方法はあるか(Hinchcliffら2015)

EIPHが馬に与える影響について、これまでに行われた調査をワーキンググループが精査してエビデンスを評価したものが公開されています。 (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); EIPHの予防方法について EIPHに対する治療方針はほとんど示されて…

馬における運動誘発性肺出血:北米大学獣医内科によるコンセンサスステートメント④馬のパフォーマンスへの影響(Hinchcliffら2015)

EIPHが馬に与える影響について、これまでに行われた調査をワーキンググループが精査してエビデンスを評価したものが公開されています。 (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); EIPHのパフォーマンスへの影響について 競走馬に関わる人間にとっ…

馬における運動誘発性肺出血:北米大学獣医内科によるコンセンサスステートメント③馬の健康への影響(Hinchcliffら2015)

EIPHが馬に与える影響について、これまでに行われた調査をワーキンググループが精査してエビデンスを評価したものが公開されています。 (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); 臨床症状について EIPHの診断のゴールドスタンダードは、内視鏡ま…

馬における運動誘発性肺出血:北米大学獣医内科によるコンセンサスステートメント②緒言〜材料と方法(Hinchcliffら2015)

競走馬のEIPHによる鼻出血は、年齢が高くなるほど発生しやすいことがわかっていますが、育成馬にも見られる疾患です。 EIPHについては多くのレポートがあり、多くの文献を北米獣医内科学会が中心となり、ナラティブレビューというよりはシステマティックレビ…

馬における運動誘発性肺出血:北米大学獣医内科学会によるコンセンサスステートメント①要約(Hinchcliffら2015)

馬の運動誘発性肺出血は、競走馬においてまれに発生する疾患で、パフォーマンス減退の原因となります。 日本の競走馬におけるEIPHの発生 2001年にJAVMAに掲載された報告では、日本の競走馬におけるEIPHによる鼻出血の発生率は0.15%とされています。発生に関…

ケンタッキー州の135頭の馬における145の顆骨折の治療成績(Zekasら1999)

前回と同じ症例シリーズで、手術後の成績を比較検討した文献があります。 equine-reports.work これまでにも骨折の形状や部位および変位の有無などが競走復帰の予後に影響することが明らかにされてきました。変位のある骨折では内固定手術が必要で、予後は悪…

ケンタッキー中央部における135頭の第三中手骨および中足骨の顆骨折のタイプと部位(Zekasら1999)

第三中手骨および中足骨の顆骨折は、競走馬の球節において一般的に見られる骨折で、サラブレッドやスタンダードブレッドで報告されているものがほとんどです。この骨折は急性の発症メカニズムと考えられてきましたが、近年の調査からストレス性の変化が掌側…

第三中手骨の軟骨下骨嚢胞病変に対する外科的治療、15頭の成績1986ー1994年(Hoganら1997)

球節の軟骨下骨嚢胞は第一指/趾骨または第三中手/中足骨に関連してみられることが知られています。若い馬に多くみつかり、軽度から中程度の跛行を示すものの、関節の腫脹を伴う症例が多くないことが特徴です。診断麻酔後にX線検査を行うことで発見されること…

蹄骨の軟骨下骨嚢胞の関節鏡下掻爬術11頭1994ー2000年(Storyら2004)

蹄骨の軟骨下骨嚢胞は跛行の原因となることがあり、保存療法でも比較的良好な予後が得られることは前回の記事で紹介しました。 equine-reports.work しかしながら、保存療法で跛行が消えない場合には、関節鏡下での搔爬術が考慮されます。 pubmed.ncbi.nlm.n…

蹄骨シスト状病変のX線による診断、保存療法、競走成績(Peterら2018)

蹄骨のシスト状病変は、まれに跛行の原因となることがあります。 多くは触診上で蹄を疑う所見はあまり得られないため、診断麻酔によって疼痛部位が特定され、画像診断により検出されます。 これまでに小頭数の報告がなされており、関節内への投薬を含む保存…

ウェルカム獣医学生研修!

2024.01.29 追記・編集 2025 獣医師募集 (公益財団法人)軽種馬育成調教センター(略称:BTC)は、北海道浦河町にある軽種馬育成施設です。以下の3つの目的のために事業を行っている団体です。 軽種馬の育成調教技術の改善・普及 軽種馬の育成調教技術者の…

赤外線体温計を用いたサラブレッド競走馬における運動性熱中症の早期検出:オーストラリア東部の競馬場における調査(Brownlowら2020)

馬の熱中症 近年は有名な競走馬が熱中症に続発する様々な疾患を併発して亡くなる事例も出てきています。サラブレッドにおける熱中症は年々関心が高くなってきています。 気候変動による日中の気温および湿度の上昇は明らかで、競馬や調教に関する様々な工夫…

肺炎により死亡した競走馬の回顧的調査(Carvallloら2017)

輸送に関連した呼吸器疾患、いわゆる輸送熱が増加してきているように感じます。 競走馬にとって出走するにも休養するにも、輸送は避けられないものですが、これは競走馬に多く発生する呼吸器疾患の最大のリスク因子となっています。 レース後すぐに輸送した…

オーストラリアのサラブレッド1歳馬におけるセリ後内視鏡検査は将来のパフォーマンスを予期できるか(Ahernら2022)

オーストラリア1歳セリで取引された馬の上部内視鏡検査を4年間分調査して、臨床的によく用いられるグレード分類を行った調査です。この分類と競走成績との関連を、オーストラリア国内での競走成績をもとに解析しています。 現在最もよく用いられている分類の…

バイオフィルムと馬の脚部の創傷 レビュー その⑤(Jorgensenら2021)

馬の下肢部(前肢なら腕節より下、後肢なら飛節より下)の創傷管理は困難を伴うことがあります。小さな創傷であったとしても治癒遅延がおきやすく、結果的に運動復帰が遅れてしまうことがしばしばあります。 これにはいくつかの要素がかかわっていると考えら…

敗血症性胸膜肺炎97症例の生存に関連する因子(Arroyoら2017)

輸送に関連した肺炎は重篤化する可能性があるため注意が必要です。 発熱、尾翼開帳呼吸、呼吸数増加、胸部痛(動くと痛い、唸る)、沈鬱(頭が下がったまま、飼い葉も食べない)、鼻汁がみられる症例では、胸膜肺炎を疑って早急に治療を開始することが重要で…

バイオフィルムと馬の脚部の創傷 レビュー その④(Jorgensenら2021)

馬の下肢部(前肢なら腕節より下、後肢なら飛節より下)の創傷管理は困難を伴うことがあります。小さな創傷であったとしても治癒遅延がおきやすく、結果的に運動復帰が遅れてしまうことがしばしばあります。 これにはいくつかの要素がかかわっていると考えら…

バイオフィルムと馬の脚部の創傷 レビュー その③(Jorgensenら2021)

馬の下肢部(前肢なら腕節より下、後肢なら飛節より下)の創傷管理は困難を伴うことがあります。小さな創傷であったとしても治癒遅延がおきやすく、結果的に運動復帰が遅れてしまうことがしばしばあります。 これにはいくつかの要素がかかわっていると考えら…

バイオフィルムと馬の脚部の創傷 レビュー その②(Jorgensenら2021)

馬の下肢部(前肢なら腕節より下、後肢なら飛節より下)の創傷管理は困難を伴うことがあります。小さな創傷であったとしても治癒遅延がおきやすく、結果的に運動復帰が遅れてしまうことがしばしばあります。 これにはいくつかの要素がかかわっていると考えら…

バイオフィルムと馬の脚部の創傷 レビュー その①(Jorgensenら2021)

馬の下肢部(前肢なら腕節より下、後肢なら飛節より下)の創傷管理は困難を伴うことがあります。小さな創傷であったとしても治癒遅延がおきやすく、結果的に運動復帰が遅れてしまうことがしばしばあります。 これにはいくつかの要素がかかわっていると考えら…