競走馬のEIPHによる鼻出血は、年齢が高くなるほど発生しやすいことがわかっていますが、育成馬にも見られる疾患です。
EIPHについては多くのレポートがあり、多くの文献を北米獣医内科学会が中心となり、ナラティブレビューというよりはシステマティックレビューとして発表したレポートについて紹介します。
この中では以下の4つのテーマについてわかっていることや推奨されることをまとめてコンセンサスステートメントを出すことを目的に調査されました。
- EIPHは馬の健康や福祉に負の影響があるか
- EIPHは馬の運動能力に影響するか
- EIPHに効果的な予防的介入はあるか
- フロセミドは馬の運動能力に影響するか
数多く存在する実験的なレポートから症例集までをGRADEと呼ばれる手法を用いてエビデンスを評価しました。
EIPHの定義は、運動後に期間内に出血があることとされました。気管内視鏡で出血を確認するか、気管吸引液または肺胞洗浄液で赤血球または貪食されたへモジデリンを検出することで出血が検出されます。EIPHでは見えない出血も鼻出血も起こします。この報告ではどちらもEIPHとして扱われています。
北米の獣医大学の内科学の著名な先生が作成した運動誘発性肺出血EIPHについての合意声明がJVIMに掲載されています。これはOpen Accessで誰でも読むことができます。
緒言
運動誘発性肺出血【EIPH】は運動中の馬の肺からの出血をさす。サラブレッドやスタンダードブレッド競走馬のほとんどに発生し、他の多くの種類の馬においても強い運動負荷によって発生する。
EIPHの重大さとフロセミドを使用することは認知されていて、これは2014年時点でネット検索をすれば、「馬の出血」で45,000件、「EIPH」で113,000件、「ラシックスと馬」で890,000件、「フロセミドと馬」で905,000件がヒットする。Web of Scienceで検索すると、「運動誘発性肺出血」または「運動誘発性肺出血と馬」で368件・・・(中略)
非科学的なものや専門家以外の人が書いたものまである。
この合意声明の目的として、EIPHは運動後に気管内視鏡検査にて血液が検出される、気管支肺胞洗浄液中に赤血球が存在する、もしくはそのどちらかと定義する。気管支肺胞洗浄内の赤血球濃度に関しては合意はなく、これは調査結果によってさまざまである。EIPHの発生を防いだり、重症度を下げる目的で行うことは予防とよび、運動前に行うほとんどのことは治療とは呼ばない。EIPHの治療は運動後に発生したEIPHにどう対処するかということである。
この合意声明ではE馬におけるIPHに関する4つのトピックとその予防について述べる。薬の投与を検出すること、ほかの薬剤や物質をフロセミドがマスクしてしまう効果のこと、EIPHの病態、リスク因子、フロセミドを使うことによる健康や競走成績への影響については言及しない。