育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

2023-01-01から1年間の記事一覧

CTは肘の跛行における病変を検出する画像診断技術である:99頭139関節の調査(Zimmermanら2022年)

肘関節を原因とする跛行は多くないものの、まれに橈骨近位や上腕骨遠位の関節面に形成される骨病変が跛行の原因として検出されることがあります。 身体検査で肘や肩の関節が腫れていることを確認することは難しく、屈曲痛を示さず、屈曲試験に反応しないこと…

競走馬における上腕骨骨折と疲労骨折(Technote UC Davis)

上腕骨骨折と疲労骨折に関する一般的な情報 上腕骨骨折は先行する疲労骨折に関連した骨の脆弱化によって発生するのが典型的である。疲労骨折が多く発生する部位は上腕骨の近位尾側面(頸部:上部の後側)、遠位皮質骨の頭側面(尾側面は少ない、上腕骨顆の近…

サラブレッド競走馬における上腕骨骨折パターンのレビュー(Sammosら2009AAEP)

2009年のAAEPでは、上腕骨骨折のパターンについてのレビューが発表されています。 骨折の特徴 ストレス骨折(疲労骨折)は特定の部位に決まってみられることがわかっています。ストレス骨折に関連した骨代謝活性の上昇が核シンチグラフィで検出されるほか、X…

第三中手骨矢状稜遠位のOCD診断と治療(Wrightら2014)

球節の、特に第三中手骨矢状稜遠位のOCDは、跛行の原因となることがあります。 球節内のOCDは多く報告されていて、第三中手または中足骨では矢状稜またはそれに隣接する顆の部分に限られて、欠損しているように見えます。この病変は前肢よりも後肢の方がよく…

ベルギー温血種におけるトウ状骨の骨片と形状の関連(Claerhoudtら2011)

トウ状骨はトウ嚢とよばれる袋の中に存在し、蹄骨と深屈腱の間に位置しています。アクシデントによる外力や外傷によって骨折がおきることが知られています。 トウ状骨骨折が起きると、中程度から重度の跛行を呈しますが、身体検査では特異的な所見が得られる…

トウ状骨遠位の骨片:跛行とMRIの関連(Yorkeら2014)

トウ状骨はトウ嚢とよばれる袋の中に存在し、蹄骨と深屈腱の間に位置しています。アクシデントによる外力や外傷によって骨折がおきることが知られています。 トウ状骨骨折が起きると、中程度から重度の跛行を呈しますが、身体検査では特異的な所見が得られる…

跛行のある馬とない馬におけるトウ状骨遠位の骨片と形状のX線による評価(Biggiら2012)

トウ状骨はトウ嚢とよばれる袋の中に存在し、蹄骨と深屈腱の間に位置しています。アクシデントによる外力や外傷によって骨折がおきることが知られています。 トウ状骨骨折が起きると、中程度から重度の跛行を呈しますが、身体検査では特異的な所見が得られる…

蹄部に痛みのある馬のトウ状骨遠位境界部の骨片に対するMRI所見(Biggiら2011)

トウ状骨はトウ嚢とよばれる袋の中に存在し、蹄骨と深屈腱の間に位置しています。アクシデントによる外力や外傷によって骨折がおきることが知られています。 トウ状骨骨折が起きると、中程度から重度の跛行を呈しますが、身体検査では特異的な所見が得られる…

トウ状骨遠位境界部の骨片とシスト状病変に関連したX線とMRI所見の比較(Biggiら2010)

トウ嚢炎に関連するトウ状骨の骨片所見

トウ状骨の粉砕骨折と深屈腱断裂(Hoegaertsら2005)

トウ状骨の骨折は、慢性跛行の原因となります。 トウ嚢に対して繰り返しステロイド投与を行うことは、深屈腱実質の変性を招くことがあり、注意が必要です。 (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); 参考文献 pubmed.ncbi.nlm.nih.gov 要約 10歳…

トウ状骨骨折の17症例(1982-1992)(Lillichら1995)

トウ状骨はトウ嚢とよばれる袋の中に存在し、蹄骨と深屈腱の間に位置しています。アクシデントによる外力や外傷によって骨折がおきることが知られています。 トウ状骨骨折が起きると、中程度から重度の跛行を呈しますが、身体検査では特異的な所見が得られる…

繫靱帯脚炎の超音波、CT、MRI、剖検所見(Elemmawyら2019)

競走馬の繫靱帯脚炎 種子骨炎に関連した繫靱帯脚炎は育成期から競走期にかけてよくみられます。 十分な休養と運動制限を組み合わせたリハビリを経ることで、良好な治療成績を得ることができます。また、近年では繫靱帯脚部辺縁損傷に対して、損傷部分をトリ…

ウェルカム獣医学生研修!

2022.08.30 追記・編集 引き続き、BTC診療所における職場見学・研修・インターンを募集します。 *原則、獣医学部4年生以上を対象とします。 馬の生産地である日高の獣医さんのところで研修してみませんか? 特に春から夏にかけては繁殖や子馬の診療も増える…

馬における高速トレッドミルを用いた上気道検査:291頭の臨床例(Tanら2005)

運動時内視鏡検査では、複数の所見が見つかることが一般的です。いくつかの所見は関連しているかもしれず、特に披裂喉頭蓋ヒダの軸側変位は、その程度が重度であるほど、他の所見も多く見つかることがわかっています。 これらの所見が実際に臨床的にパフォー…

英国の若齢競走馬における中手骨背側の疾患と調教の要素の関連(Verheyenら2005)

調教初期段階に速いタイムの調教やキャンターの量(距離)を急激に増やすことは、ソエの発生リスクを上昇させます。一方で、徐々にキャンターや速い調教を増やしていくことで、累積の距離が長い馬ではリスクが低くなることがわかっています。 (adsbygoogle =…

外側膝蓋靱帯の超音波検査における正常と異常所見(Gottliebら2016)

膝関節を原因とする跛行のうち、膝蓋靱帯の損傷は多くありません。靱帯損傷の多くは外傷と関連していて、ほとんどで靱帯付着部の骨折を伴うことが報告されています。 膝蓋靱帯は正常な馬でも超音波検査画像は独特な見え方をしますが、重度の跛行を伴う靱帯損…

1歳時にEE切開を行った馬のその後の競走パフォーマンス(Curtissら2020)

喉頭蓋エントラップメントは、喉頭蓋下の組織によって喉頭蓋が覆われてしまう状態で、プアパフォーマンスおよび運動時の異常呼吸音を呈することがあります。 この疾患のサラブレッドにおける本当の所見率はよくわかっていないものの、1歳セリのレポジトリ内…

大腿骨内側顆の軟骨下骨嚢胞と併発または続発した脛骨の軟骨下骨病変(Bonillaら2016)

成馬における脛骨の軟骨下骨病変は、慢性的な骨関節炎に併発してみられることがあります。そして、しばしば大腿骨の軟骨下骨病変を伴います。 半年以上の慢性後肢跛行を呈した、大腿脛骨関節の慢性関節炎の症例4頭の治療成績が報告されています。これらの症…

脛骨近位の軟骨下骨嚢胞12症例1983-2000年(Textorら2001)

脛骨近位の軟骨下骨嚢胞所見は、若い馬では骨軟骨症に関連すると考えられる病変もある一方で、運動している成馬では大腿脛骨関節の骨関節炎および大腿骨の骨軟骨病変と併発してみられることがあります。 若馬の骨軟骨炎(OA)に関連すると考えられる軟骨下骨病…

MRIとエコーで喉頭異形成を診断した5例(Garretら2009年)

喉頭片麻痺はほとんどが左に発生し、これは左反回喉頭神経が障害されやすいためと考えられています。これは解剖学的な特徴に起因するという通説がありますが、病態形成についてはまだまだ不明な点も残されています。 一方で右の喉頭片麻痺はあまり多くなく、…

トレッドミル内視鏡検査と超音波検査および安静時内視鏡検査との関連(Garrettら2011年)

反回喉頭神経症は、左反回喉頭神経の障害により、輪状披裂筋が神経原生筋萎縮をおこすことで、披裂軟骨の外転がうまくいかなくなることが主要な病態です。萎縮をおこした輪状披裂筋は、安静時の披裂軟骨の外転不全につながるだけでなく、運動などで呼吸時の…

馬のプアパフォーマンス:整形外科以外の診断について(Ellisら2022) ⑫筋肉 その他の筋疾患

プアパフォーマンス 馬におけるプアパフォーマンスの原因は様々です。まず思いつく原因として、整形外科的な疾患では関節炎や腱鞘炎、疲労骨折など疼痛や機械的な障害を伴うものがあります。ですが、他にも様々な呼吸器、循環器、消化器および筋肉の疾患があ…

馬のプアパフォーマンス:整形外科以外の診断について(Ellisら2022) ⑪筋肉 遺伝性筋疾患

プアパフォーマンス 馬におけるプアパフォーマンスの原因は様々です。まず思いつく原因として、整形外科的な疾患では関節炎や腱鞘炎、疲労骨折など疼痛や機械的な障害を伴うものがあります。ですが、他にも様々な呼吸器、循環器、消化器および筋肉の疾患があ…

馬のプアパフォーマンス:整形外科以外の診断について(Ellisら2022) ⑩筋肉 総論

プアパフォーマンス 馬におけるプアパフォーマンスの原因は様々です。まず思いつく原因として、整形外科的な疾患では関節炎や腱鞘炎、疲労骨折など疼痛や機械的な障害を伴うものがあります。ですが、他にも様々な呼吸器、循環器、消化器および筋肉の疾患があ…

馬のプアパフォーマンス:整形外科以外の診断について(Ellisら2022) ⑨汗腺の機能不全

9アパフォーマンス 馬におけるプアパフォーマンスの原因は様々です。まず思いつく原因として、整形外科的な疾患では関節炎や腱鞘炎、疲労骨折など疼痛や機械的な障害を伴うものがあります。ですが、他にも様々な呼吸器、循環器、消化器および筋肉の疾患があ…