英国の若齢競走馬における中手骨背側の疾患と調教の要素の関連(Verheyenら2005)

調教初期段階に速いタイムの調教やキャンターの量（距離）を急激に増やすことは、ソエの発生リスクを上昇させます。一方で、徐々にキャンターや速い調教を増やしていくことで、累積の距離が長い馬ではリスクが低くなることがわかっています。

参考文献

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

研究を行った理由

　中手骨背側の疾患(DMD)は、若いサラブレッド競走馬において一般的にみられ、しばしば調教プログラムの妨げとなる。英国においてこの疾患の発症率や関連するリスク因子に関する報告はまったくない。

目的

　英国の平地競走にむけて調教しているサラブレッドにおけるDMDの発症率を算出すること、関連するリスク因子、特に調教計画に関連する因子を同定すること。

方法

　13の調教場にいるサラブレッド競走馬を対象に大規模な前向き調査を行い、2年間モニタリングして、毎日の調教およびDMDを含む運動器疾患に関する情報を得た。DMDの発症率を算出し、生存解析を行い、この疾患のリスクに関連する調教計画の特徴を明らかにした。

結果

　335頭の馬が4235ヵ月間DMD発症のリスクがあった。79頭の初発例が記録され、1ヶ月100頭あたり1.87例（95%信頼区間1.50−2.33）の発生率であった。1ヶ月以内の短期間でキャンターや高速調教の距離を伸ばすことはDMDのリスク増加と関連した。しかし一方で、調教始めてからの調教距離が増えることはDMDのリスク減少と関連していた。

結論

　キャンターや高速調教の距離合計が増えると、若いサラブレッドのDMDリスクは低下する。このことは第三中手骨にかかる負荷に骨が適応する反応を反映している。しかし一方で、1ヶ月未満の短期間に走行距離を増やすことはDMDのリスクを増加させ、おそらくこれは微細な損傷とそれによるリモデリング反応の結果であり、したがって避けるべきである。

潜在的関連性

　若いサラブレッドの調教計画は、DMD発症を予防するために調整できる。早めに、でもゆっくりと少しずつ高速調教を増やしていくのが良い。高速調教をする日にはキャンターの距離を最小限にすべきで、特に調教初期の段階では1週間、2週間、1ヶ月と短期間でキャンターや高速調教をすることは避けるべきである。これによってDMDのリスクを最小限にできる。