育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

脛骨近位の軟骨下骨嚢胞12症例1983-2000年(Textorら2001)

脛骨近位の軟骨下骨嚢胞所見は、若い馬では骨軟骨症に関連すると考えられる病変もある一方で、運動している成馬では大腿脛骨関節の骨関節炎および大腿骨の骨軟骨病変と併発してみられることがあります。

若馬の骨軟骨炎(OA)に関連すると考えられる軟骨下骨病変は、偶発的に見つかることがあり、その場合は臨床症状が見られないことが多いです。

骨関節炎の場合は、診断された時点で慢性的な跛行を呈していることがあり、関節内投与などで一時的な歩様の改善はみられるものの、跛行が再発することがあります。

 

ある調査では、脛骨軟骨下骨病変を関節鏡下でデブリードした症例について報告しています。骨軟骨症に関連すると考えられる病変は全て脛骨外側顆にみられました。デブリードした4頭中3頭が競走復帰しました。中程度の骨関節炎を併発した脛骨の軟骨下骨病変をデブリードした3頭中2頭は競走復帰しましたが、パフォーマンスは低下しました。

 

 

 

参考文献

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

要約

目的

 以前は骨軟骨症または骨関節炎に関連した所見と分類されていた、馬の脛骨近位の軟骨下骨嚢胞の臨床所見およびX線所見を明らかにすること、外科的掻爬の結果を評価すること。

 

デザイン

 回顧的調査

 

動物

 12頭の馬で14の軟骨下骨嚢胞

 

方法

 医療記録とX線検査を治療前後で回顧した。

 

結果

 6頭の若馬に8の病変があり、軟骨下骨嚢胞は骨軟骨症と関連すると考えられ、全て脛骨外側顆にみられた。残りの6頭は成馬で、骨嚢胞所見に加えて骨関節炎所見もみられた。骨軟骨症による病変とみられた4頭および骨関節炎によるとみられた3頭に対して関節鏡視下での掻爬術を行った。骨軟骨症による病変とみられた3頭は、術後に運動復帰した。中程度の骨関節炎がみられた2頭は、術後に運動復帰したが、パフォーマンスレベルは下がった。骨軟骨症に関連した骨嚢胞の1頭は内科療法に反応し、競走復帰した。

 

結論と臨床的関連性

 本調査の結果から、脛骨近位の内側または外側の頭側に位置する軟骨下骨嚢胞に対して、関節鏡による掻爬術は実施可能であることが示唆された。また、術後は運動復帰することが可能であることも示唆された。

 

馬の跛行診断に必携