育成馬臨床医のメモ帳

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サラブレッド1歳馬のレポジトリ検査でみられる明らかな病変の分布と所見率(Oliverら2008)

調査で分かったこと

ニュージーランドのサラブレッド1歳における飛節と膝関節の骨軟骨病変所見率の調査。

1505頭が対象となった調査で、飛節OCDは4%、膝関節OCDは3%の馬にみられました。また、大腿骨内側顆の骨シスト状病変(いわゆる後膝のボーンシスト)は2%でみられました。

この調査における所見率は他国の1歳馬における調査で報告されている所見率と明らかな差はありませんでした。通常のサラブレッド1歳馬の集団における所見率が明らかとなり、これを基準として所見率を比較して評価することができるのではないかと著者らは述べています。

 

参考として、日本のセリにおける1歳馬の飛節OCDは以下の通り報告されています。

 

 

参考文献

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

目的

 ニュージーランドにおけるサラブレッド1歳馬の飛節および膝関節OCD所見の分布と所見率の特徴を明らかにし、他地域のものと比較すること。

 

方法

 2003-2006年のニュージーランド国内の1歳セリレポジトリX線検査を2人の読影者が評価した。X線所見の分布は左右どちらかまたは両方で分類した。病変は、タイプ、部位、性別で分類した。1505頭の1歳馬で飛節と膝関節のすべてのX線検査を評価した。

 

結果

 足根関節遠位の骨棘または付着部骨増生は460頭/1505頭(31%)でみられた。OCDは飛節66頭(4%)、膝関節40頭(3%)にみられた。大腿骨内側顆の遠位または軸側の透過像は247頭(16%)でみられた。軟骨下骨シスト様病変は26頭(2%)であった。オスとメスで飛節や膝関節のX線所見に有意な差はなかった。膝関節のOCDおよび軟骨下骨シスト状病変の所見率は米国のサラブレッド1歳と同様であった。また、遠位足根関節にみられる変化の所見率は、スカンジナビアや米国のスタンダードブレッドおよびサラブレッド1歳と同様であった。

 

結論

 オスとメスで飛節および膝関節のOCD、大腿骨内側顆の透過像および遠位足根関節の所見には有意な差はなかった。

 

臨床的関連性

 ニュージーランドのサラブレッド1歳馬における飛節や膝関節のX線所見の分布や所見率を明らかにすることができ、これにより他国の1歳馬と比較することができる。一般的な所見率を知っておくことで、個別の牧場における所見率の異常な高さまたは低さに気付く助けとなり、また病変形成に関するさらなる調査ができるかもしれない。

 

repository

軽種馬におけるレポジトリーのためのX線検査ガイド