育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

CTは肘の跛行における病変を検出する画像診断技術である:99頭139関節の調査(Zimmermanら2022年)

肘関節を原因とする跛行は多くないものの、まれに橈骨近位や上腕骨遠位の関節面に形成される骨病変が跛行の原因として検出されることがあります。

身体検査で肘や肩の関節が腫れていることを確認することは難しく、屈曲痛を示さず、屈曲試験に反応しないこともあります。したがって診断麻酔などで腕節以下を原因とする跛行が除外できたときには、肘や肩関節に原因があることを疑って関節内ブロックを検討します。

X線検査では肘の病変を全て検出することは難しく、また関節面の評価が不十分となってしまうことがあります。近年馬の診療でも多く用いられているCT検査では、肘関節で多い軟骨下骨の病変や、骨関節炎を詳細に観察することができることが報告されています。また、跛行を伴う肘関節では、骨吸収の所見が重度であったことが報告されています。これらは2次元の単純X線画像では評価が難しい所見で、CT検査で評価する利点となります。

 

 

参考文献

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

獣医二次診療においてCTはますます使われるようになってきている。しかし、馬の肘関節でCTで見られる病変について記述した研究は現在のところ不足している。この調査は単一の病院における、回顧的、観察研究で、2015年7月から2018年10月までのEquitomを用いた肘のCTを回顧的に調査した。軟骨下骨硬化、橈骨、尺骨および上腕骨の骨吸収、骨棘および付着部骨増生をグレード分類した。99頭の139の肘関節(痛みのある肘16関節、対照123関節)を対象とした(年齢中央値9歳)。骨嚢胞様病変(n = 13)は、橈骨近位内側および上腕骨内側にのみ認められ、肘関節痛を有する馬(n = 16)では跛行の最も一般的な原因であり、このグループでは骨吸収(骨嚢胞様病変を含む)のグレードが有意に高かった。1頭の肘には外側上顆の裂離骨折がみられ、他の2頭には変形性関節症の徴候がみられた。橈骨近位内側部における硬化の程度は、肘関節痛を有する馬で有意に高かったが、関節内側部では軽度から中等度の軟骨下骨硬化がすべての馬で認められた。橈骨内側の体重を支える面の骨軟骨断片化病変(2/16 vs 1/123; P = 0.0025)および関節内ガス(4/16 vs 2/123; P < 0.0001)は、対照馬と比較して肘関節痛のある馬で有意に多かった。軽度の線状吸収性軟骨下骨病変は、臨床的に問題とならないことが多かった(上腕骨内側で32/123 vs 5/16、橈骨内側で19/123 vs 2/16)。結論として、肘関節CTは、肘関節痛を有するウォームブラッド成馬において、臨床的に関連性のある病変を検出するための実行可能な方法である。