上腕骨骨折と疲労骨折に関する一般的な情報
上腕骨骨折は先行する疲労骨折に関連した骨の脆弱化によって発生するのが典型的である。疲労骨折が多く発生する部位は上腕骨の近位尾側面(頸部:上部の後側)、遠位皮質骨の頭側面(尾側面は少ない、上腕骨顆の近位で、肘関節の上にあたる)である。上腕骨完全骨折は、遠位よりも頸部の疲労骨折に関連したものが多くみられる。
上腕骨疲労骨折は両前肢に起きることが多い。したがって、発症馬は運動を嫌がるが、どちらかの脚の明確な跛行はないかもしれない。
初めは顕著な跛行を呈するが、骨折が治癒していないにも関わらず、跛行がすぐに消失する。跛行は軽度から重度のことがある。重度跛行の馬では常歩と速歩で前方短縮がよくみられる。
必ずというわけではないが、上腕骨疲労骨折は調教を開始したときもしくは休養から調教に復帰したときに多く発生する。休養から調教に復帰したときに動きがおかしかったり、一時的な跛行を呈したりしたときには、上腕骨疲労骨折を考慮すべきである。休養後の初めての追切よりも前に疲労骨折がおきることがある。
上腕骨は腕部の分厚い筋肉の深い位置にあること、胸部に近いことから、上腕骨疲労骨折は身体検査で触診により検出されることはない。肘や肩関節を操作した後に跛行の悪化や疼痛を示す馬もいる。
上腕骨疲労骨折はボーンスキャン(シンチグラフィ)で確実に検出できる。
ボーンスキャンで病変のある馬のうち約半分はX線検査で疲労骨折を検出できる。疲労骨折が形成される初期段階ではX線検査では異常が見えないかもしれない。診断のつかない前肢跛行を呈し、上腕骨疲労骨折の発症に一致する経過のある馬では、後から骨増生が検出されることがあるため、繰り返しのX線検査が推奨される。
上腕骨疲労骨折の馬はリハビリ後に競走復帰できる。疲労骨折の再発は15%のみで起きる。逆に、完全骨折は成馬の競走馬ではほぼ例外なく致死的である。
疲労骨折の検出方法
肩から肘関節の間で、胸の近くで上腕骨疲労骨折が発生する。斜骨折では大きな2つの骨片に分断される。
先行する疲労骨折があると、完全骨折になりやすい。骨折部位に毛羽だったような白い骨組織が表面にあると、先行する疲労骨折があった根拠となる。
疲労骨折の部位は弱く、普通の調教でもその部位で疲労骨折が起きやすくなる。
X線検査
上腕骨疲労骨折はその病態が進んだ後にX線検査で検出されるが、早期には情報が得られない。発症から1ヶ月経ってもまだ疲労骨折はアクティブで(仮骨形成が)みられる。3ヵ月経過すると仮骨が平滑で均一となり疲労骨折は治癒する。画像上の特徴は、皮質骨の完全性の消失と、周囲の仮骨形成である。
ボーンスキャン(シンチグラフィ)
シンチグラフィでは疲労骨折の病態初期でも検出できる。例示されているボーンスキャンの疲労骨折部位は、近位頭側、近位尾側、三角筋粗面、骨幹部中位、遠位頭側、遠位尾側である。
出典
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