育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

脛骨と上腕骨疲労骨折のサラブレッド競走馬99例(O'Sullivanら2003)

 

脛骨疲労骨折とは

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疲労骨折と運動歴および発症率

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疲労骨折と完全骨折

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スタンダードブレッド競走馬では

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脛骨疲労骨折と上腕骨疲労骨折

脛骨疲労骨折は、サラブレッド競走馬では未出走の2歳馬に多く発生することが明らかにされています。好発部位は3か所で、最も多い部位は骨幹中位の尾外側皮質骨でした。シンチグラフィ検査とX線検査および診断麻酔を組み合わせた診断が行われ、X線検査で疲労骨折を検出できた症例は76%でした。休養と運動制限により80%の症例が出走することができました。

一方で上腕骨疲労骨折は、出走歴のある馬で多く、過去の調査とは異なりました。上腕骨骨折の好発部位は4か所で、最も多いのは遠位尾側の皮質骨でした。しかし、X線検査による病変の同定は脛骨よりも難しく、全体の56%にとどまり、好発部位である遠位尾側の疲労骨折はX線検査による診断は難しいことが明らかになっています。上腕骨疲労骨折も、休養と運動制限を経ることで77%の症例が競走復帰することができ、予後は良好でした。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

目的

 サラブレッド競走馬の脛骨および上腕骨疲労骨折症例の臨床的な特徴とその成績を明らかにすること。

 

デザイン

 回顧的研究

 

動物

 脛骨または上腕骨疲労骨折を発症した99頭のサラブレッド

 

方法

 医療記録を調査し、経過、シグナルメント、臨床所見、X線所見およびシンチグラフィ検査所見についての情報を得た。成績は、調教師への聞き取り、フォローアップ検査および競走成績により評価した。

 

結果

 61頭のサラブレッドで74の脛骨疲労骨折が、39頭のサラブレッドで48の上腕骨疲労骨折が見つかった。1頭はどちらの疲労骨折も発症していた。脛骨疲労骨折は、2歳または未出走馬に最も多くみられた。骨折部位は、脛骨では3つ(最骨幹も多かったのは骨幹中位の尾外側皮質骨)、上腕骨では4つ(最も多かったのは遠位尾側の皮質骨)であった。X線検査で同定できた疲労骨折は、脛骨では44/58(76%)、上腕骨では18/32(56%)であった。上腕骨疲労骨折のなかでも、遠位尾側の皮質骨における疲労骨折はX線検査で検出できなかった。治療方法は休養と運動制限が行われ、脛骨疲労骨折は49頭/61頭(80%)、上腕骨疲労骨折は30頭/39頭(77%)が競走復帰した。上腕骨疲労骨折は6頭で再発した。

 

結論と臨床的関連性

 本調査の結果から、サラブレッド競走馬において、脛骨疲労骨折は未出走の2歳馬に最も多く発生することが示唆された。一方で、上腕骨疲労骨折はより年齢が高く出走歴がある馬で多く発生することが示唆された。治療後に競走復帰できる予後は良好であった。