育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

第一指(趾)骨背側骨片除去後の競走成績(Colonら2000)

球節における第一指(趾)骨骨片骨折は競走馬で非常に多くみられる骨折で、多くはX線検査で診断されてきましたが、近年では超音波検査でより詳細に関節を観察して骨片が検出できることが示されています。

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骨片骨折を発症した馬では、球節の関節液増量がみられ、跛行や疼痛および関節機能障害によるパフォーマンスの低下を引き起こします。これに対して、骨片が症状との関連性が低いとき、骨片がごく小さいときなどには保存的治療が選択されます。一方で、骨片除去手術により関節内の炎症を早期に抑えることも有効な治療方法です。

2000年にケンタッキーのRood&Riddle馬病院から報告された調査結果では、第一指骨の骨片骨折に対して関節鏡視下除去手術を行った461頭のうち411頭(89%)が出走し、377頭(82%)が術前と同じか上のクラスに出走していました。関節鏡手術は早期に復帰できること、パフォーマンスの減退はないことが報告されました。

 

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

本研究の目的は、第一指骨近位背側の骨片骨折に対して関節鏡視下除去手術を行った461頭のサラブレッド競走馬について、術後の競走寿命およびパフォーマンスの質を調査することである。

骨片骨折を原因とする跛行またはパフォーマンス減退を示した461頭の競走馬の574関節から659の骨片を関節鏡視下で除去手術をおこなった。X線検査および関節鏡により、1頭あたり1.43骨片、1関節あたり1.15骨片、1頭あたり1.25関節の骨片が明らかとなった。89%(411頭/461頭)が術後に出走し、82%(377頭/461頭)は術前と同じかそれ以上のクラスで出走した。50頭は術後出走しなかった。68%の馬は術後にステークスまたはアローワンス競走に出走した。

これまでは分かっていなかったが、このデータから、第一指骨背側の骨片骨折を関節鏡手術後、パフォーマンスの量的および質的な減退はないことが証明された。サラブレッドにおいてこの骨片骨折を発症した馬に対して外科的に除去することで、経済的価値を温存することができ、早期に術前のレベルのパフォーマンスに復帰できる。