育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

第一指骨矢状骨折のラグスクリュー固定59頭(Holcombeら 1995年)

単純な第一指骨骨折を手術で内固定した後の成績について

 

第一指骨骨折のタイプは出走率に影響する

第一指骨の骨折は、不完全骨折であれば6-7割が競走復帰できるが、完全骨折の場合は競走復帰できたのは半数以下であった。骨折前後で出走回数や競走タイムに差はなかった。

 

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

   

“要約

1973-1991年の期間に、第一指骨骨折中央の矢状骨折に対してラグスクリューにより整復した59頭の競走馬の医療記録を回顧的に調査した。骨折の形状は、短い不完全骨折7頭、長い不完全骨折32頭、近位指節間関節に抜ける完全骨折13頭、外側皮質骨に抜ける完全骨折7頭であった。術後の初出走までの期間、出走数、術前および術後の最速のレースタイムを競走記録から調査した。これらを骨折のタイプ別の群間比較および出走できた馬とできなかった馬で比較した。競走復帰できたのは、短い不完全骨折5頭(71%)、長い不完全骨折21頭(66%)、近位指節間関節に抜ける完全骨折6頭(46%)、外側皮質骨に抜ける完全骨折5頭(71%)であった。競走復帰率は、近位指節間関節に抜ける完全骨折が他の骨折よりも有意に低かった。術後に出走した馬の骨折から手術までの期間は平均14.7日(1-60日)で、術後に出走しなかった馬の骨折から手術までの期間は平均5.8日(1-21日)で、有意な差はなかった。骨折のタイプ別の群間で骨折前後の出走数の中央値に差はなかったし、最速タイムの中央値も骨折前後で差はなかった。”