第一指(趾)骨の背側前面の骨折に対する治療法として、保存療法や内固定を紹介してきました。ですが骨片の形状や厚み、関節の完全性などを考慮した場合に、摘出や掻爬を行った方が関節機能が保たれ、二次的な関節炎を避けられる可能性があります。
そこで今回は、このような骨折に対して関節鏡視下で掻爬術を行った症例について、その術後の競走成績を調査した文献を紹介します。
”背景
第一指(趾)骨の背側前面の骨折について、保存療法および内固定を行った結果の報告は、症例数が限られている。目的
サラブレッド種の平地競走馬における、第一指(趾)骨の新たな治療法である関節鏡視下の掻爬術の方法と、術後の競走成績を明らかにすること。研究デザイン
後ろ向きケースコントロール研究方法
第一指(趾)骨の背側前面の骨折に対し、関節鏡視下での掻爬術を行ったサラブレッド種競走馬の81症例について医療記録を調べた。画像診断と術中所見より損傷の特徴を記録し、関節鏡視下での手技も記録した。術後成績は、競走期間、出走数、獲得賞金、レースの質について、コントロールと比較した。結果
74/81(91%)が術後に出走した。コントロールとの比較では、術後出走数は症例で中央値12、95%信頼区間9-16に対し、コントロールで中央値19、95%信頼区間15-23であり、症例の方が少なかった(P<0.001)。しかし他には有意差がなく、獲得賞金は症例で中央値$541,465、95%信頼区間$39,868-85,423に対し、コントロールでは中央値$68,017、95%信頼区間$54,247-87870(P=0.7)であった。また競走期間は症例で中央値7四半期、95%信頼区間5-8四半期に対し、コントロールでは中央値9四半期、95%信頼区間8-10四半期(P=0.1)であった。主な制限
回顧的な研究であるため、サンプルバイアスは避けられず、マッチするコントロールの選定にも制限がある。結論
第一指(趾)骨の背側前面の骨折は、関節鏡視下で掻爬術を行うことにより、競走の期間や獲得賞金については損傷のない対照と同等の競走パフォーマンスが得られる。”