育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

第三手根骨橈側面の盤状不完全骨折に対するスクリュー固定(Rutherfordら 2007年)

第三手根骨骨折の前面には不完全骨折が起きることがあります。この骨折は画像診断の精度が向上したことにより診断されるようになってきました。

不完全骨折は通常保存療法がとられることが多いです。しかし近年、不完全骨折も螺子固定を行うことで安定化し治癒を促進できるという考え方が広まり、第一指骨の骨折などで臨床的な報告がなされています。

今回は第三手根骨骨折の不完全骨折に対して螺子固定を行った治療成績についてまとめた報告を紹介します。

 

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

”要約

目的

 第三手根骨骨折の橈側前面に発生した変位のない不完全骨折と診断した馬に対して、関節鏡ガイド下でラグスクリュー固定を行い、その結果を記述すること。

 

方法

 1999-2005年の期間に第三手根骨橈側前面の不完全骨折診断し治療した馬13頭について調査した。それぞれの症例ごとに、5頭ずつ性別、年齢がマッチする、不完全骨折かどうかわからない馬を比較のために探した。競走パフォーマンスはオンラインデータベースからデータを集めた。症例の術前および術後のパフォーマンス比較、症例とマッチする馬(対照馬)の術後のパフォーマンス比較を行った。

 

結果

 13頭の馬で16の不完全骨折が見つかった。術後2-4ヵ月で骨折の治癒が11/16(69%)で認められた。11/13(85%)は術後に競走復帰した。復帰までの期間は中央値292日、149-681日であった。9/13(69%)で治療は成功しと判断し、これらは期間中に調教していたか、手根間関節以外の部位が原因の跛行で引退した。症例馬5頭で術前と術後を比較したところ、3頭(60%)で術後にパフォーマンスが改善した。術後の症例馬と対照馬を比較して、競走寿命および能力には有意な差は認められなかった。

 

結論

 術後、症例馬と対照馬の間に競走パフォーマンスの差はほとんどなかった。

 

臨床的関連性

 第三手根骨の橈側前面の不完全骨折をラグスクリューで固定した馬は良好な競走パフォーマンスの予後が得られる。”