第三手根骨前面骨折について、サラブレッドおよびスタンダードブレッド競走馬についての治療法や成績についてのまとめ。
文献でわかったこと
骨折の発生部位は背内側面が圧倒的に多く、87%を占めた。治療法は内固定、骨片摘出、保存療法のうちどれかが選択された。骨折の特徴(形状および部位)は治療選択に影響していた。
診断から競走復帰までの期間は平均11ヵ月で、サラブレッドでは全体として競走復帰率は65%であった。
治療法および骨折の特徴が成績に与える影響を明確にするためには、ランダム化した比較試験が必要。
”要約
第三手根骨の盤状骨折症例155頭の医療記録およびX線検査を回顧的に調査した。これらのうち、72頭のサラブレッドおよび61頭のスタンダードブレッドの競走記録が得られた。パフォーマンスの評価基準は以下の3つで、①出走できたか、②復帰後1年以内に10走もしくは$2000稼げたか、③1走あたりの賞金であった。ラグスクリュー固定、骨片摘出、保存の3つの治療法があり、どちらの種でも同様な割合で選択された。2つの種の間で、年齢および性別の分布、骨片の変位、骨折後のパフォーマンスに有意な差が認められた。サラブレッドでは、右第三手根骨が多く(59%)、スタンダードブレッドでは左右で差はなかった。すべての症例のうち背内側面の骨折が87%(135/155)であった。年齢はスタンダードブレッドでは2歳、サラブレッドでは3歳が多かった。出走率は、オス(90%)よりもメス(46%)で低かった。スタンダードブレッドでは、出走歴のあった38頭のすべてが競走復帰した。サラブレッドでは出走歴と成績に関連はなかった。治療法は成績に有意な影響はなかった。骨折の特徴は成績に有意な影響はなかったが、治療選択への影響はあった。リハビリ期間は治療法を含むすべての変数とは相関がなく、成績とも関連がなかった。初診から競走復帰までの期間は平均11ヵ月であった。スタンダードブレッドでは、77%が競走復帰した。サラブレッドでは65%が競走復帰した。1走あたりの賞金はどちらの種でも低くなったが、サラブレッドのほうが顕著に低下した。”