第三手根骨に発生する骨折について、その性状による分類、部位および発生率について多くの症例をまとめた文献があります。
文献でわかったこと
第三手根骨骨折盤状骨折は全体の38%を占めていて、サラブレッドに限定するとより高い発生率のようです。
スカイビュー像による診断が不可欠で、近年撮影手技はさらに改良・改変がなされ、診断精度は向上しています。
”要約
1979-1987年の期間に、オハイオ州立大学病院に来院した第三手根骨骨折の症例についてすべて医療記録を調査した。313頭の馬で、371の第三手根骨骨折があった。
馬の種類は、スタンダードブレッド57%、サラブレッド41%、クォーターホース1.6%であった。すべて若い競走馬で、平均年齢3.1歳であった。全体では右が60%、左が40%であったが、サラブレッドでは67.5%が右、27.1%が左と偏りが大きかった。
第三手根骨骨折の分類は、大きさと解剖学的な位置をもとに行った。以下にその特徴と発生率を記す。
タイプ1:橈側面の不完全骨折、39/371(10.5%)
タイプ2:橈側面近位部の大きな骨片骨折、140/371(37.7%)
タイプ3:橈側面近位部の小さな骨片骨折、18/371(4.9%)
タイプ4:内側角の骨折、13/371(3.5%)
タイプ5:橈側面の前面盤状骨折、93/371(25.1%)
タイプ6:橈側と中間面にかけての前面盤状骨折、35/371(9.4%)
タイプ7:中間面の骨折、13/371(3.5%)
タイプ8:矢状方向盤状骨折、20/371(5.4%)
スタンダードブレッドとサラブレッドでは、各骨折タイプの発生率は有意な差が認められた。スタンダードブレッドではタイプ1および2でより多く発生し、サラブレッドではタイプ5および6がより多く発生していた。この2種の違いは競走時の走法の違いに関連している。
従来の分類では骨片か盤状かという分け方であったが、本研究における分類は損傷の範囲や骨折の違いをより正確に表現したものである。
これらの骨折を正確に同定するためには、質の高いスカイビュー像を撮影することが重要で、骨折の10%以上はこの撮り方でないと検出できなかった。”