育成期と競走馬では調教強度が違うのもあると思いますが、ニューマーケットの調教場では運動器損傷の発生率がおよそ4頭に1頭で、脛骨骨折の比率が最も高いというのは意外でした。以前英国から来られた先生と、どれくらい運動器疾患が発生しているのか話したことがあるのですが、それよりも多いように感じます。また、普段診療している育成馬では、ここまで高い発生率ではありません。
特に脛骨骨折ではシンチグラフィ検査など、診断に用いるモダリティによる違いもあるのかもしれません。
平地競走馬において、運動器損傷は調教日数が減少する最も多い原因である。今日まで、競走馬の臨床現場においてよくみられる損傷の地域によるパターンに関する調査にはほとんどない。本研究は、英国ニューマーケットで調教しているサラブレッド競走馬における運動器損傷の発生率を明らかにすることを目的とした。100頭以上を繋養する3つの大きな調教場のすべての馬の診療記録を調査し、重要な運動器損傷の発生率を算出した。合計616頭を調査し、217頭の馬から248件の損傷が記録された。脛骨の骨折が20.7%、P1の骨折が14.5%で最も多かった。全体的な損傷の発生率は、それぞれの調教場で年間23-26%と同様で、いくつかのタイプの損傷では、季節性のパターンがみられた。P1、中手または中足骨の顆骨折、骨盤骨折、浅屈腱炎は、調教場により発生率にばらつきがあった。腕節やP1の骨折、浅屈腱炎はほとんどが右側に発生していた。