文献でわかったこと
副手根骨の骨折はまれですが、なかでも前面の完全骨折が最も多いとされています。副手根骨が前面で骨折した場合の多くは粉砕した骨片が発生し、手根管腱鞘内に散らばります。この破片が、腱鞘内を走行する腱を傷つけてしまうことがあり、この損傷は超音波検査で検出できることが報告されています。
副手根骨骨折の原因は、転倒や脚を引っ掛けてしまうことによる外力が原因でクラッシュするという説もありますが、運動時に発症する症例もあります。この報告ではそれらが半数ずつの割合で含まれていました。
骨片および損傷した腱の断端を腱鞘鏡視下で除去することで、運動復帰することが可能であることも報告されています。競走馬は全て競走に向けた調教に復帰することができ、術後平均12ヵ月で競走復帰しました。
参考文献
研究を実施した理由
副手根骨前面の骨折におけるX線検査と超音波検査の正確な記載はない。この骨折が手根管腱鞘およびその内容物に与える影響はこれまでに報告されていない。
目的
1)副手根骨前面骨折の部位とX線検査所見を記述すること。
2)変位した骨片が手根管腱鞘に到達すること、その結果として深屈腱に損傷が起きることを記録すること。
3)超音波検査で病変を同定すること。
4)腱鞘鏡による評価と治療を報告すること。
研究デザイン
回顧的症例集
方法
2006-2012年に単一の病院に来院した副手根骨前面骨折について、X線検査、超音波検査および腱鞘鏡画像を解析した。
結果
9つの骨折で、このうち8つは骨片が変位していて、全て手根管腱鞘内に到達していた。粉砕した骨片または突出した辺縁が深屈腱外側辺縁の裂傷を引き起こしていた。この所見は、7頭で超音波検査で検出でき、腱鞘鏡で確認された。これらの症例は、断裂した腱組織と骨片および突出した骨折辺縁を腱鞘鏡で除去し、7頭すべて運動に復帰した。骨片の変位のない骨折では、運動制限で管理し骨折の治癒が得られ、運動に復帰した。1頭は変位した骨片で、引退し牧場に戻った。
結論
副手根骨前面骨折は、外側尺骨筋腱の付着部の外側辺縁の溝より掌側に発生する。粉砕した骨片は遠位に変位し、中手中位部の手根管腱鞘または腱鞘外の反軸側、骨体の外側に移動する。変位した骨片は腱鞘内に移動し、深指屈腱を傷害する。