育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

スタンダードブレッド競走馬における上腕骨のリモデリングと疲労骨折(Krausら2005年)

上腕骨のリモデリングや疲労骨折は、致命的で重篤な骨折に繋がる可能性があります。

若齢の馬において、これらの変化が起きやすいことが知られています。

スタンダードブレッド競走馬においても、上腕骨疲労骨折は未出走の馬で発生しやすいことが分かりました。跛行は比較的重度なことが多いですが、舎飼い休養から4カ月ほどかけて徐々に引き運動を始めることが可能でした。さらに競走に向けての調教が再開でき、平均11カ月ほどで競走復帰が可能でした。

 

トロッターやペイサーの競走馬ですので、サラブレッド競走馬とは少し負荷が異なるかもしれません。しかし、休養期間を十分に設け、その後の運動を緩やかに強度を増強するこが復帰へのカギとなります。

 

 

参考文献

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

ペイサーの2歳馬2頭、ペイサーの1歳馬1頭、トロッターの2歳馬1頭が、急性前肢跛行により核シンチグラフィ検査を受けた。跛行のグレードは、3-4/5であった。放射性医薬品の取り込み亢進が見られたのは、遠位頭内側面が1頭、皮質骨尾側面が3頭であった。4頭中2頭で両側に発生した。上腕骨骨幹中央部の尾側皮質骨の肥厚は異常所見として認められたが、全ての馬でX線検査で明らかな変化は認められなかった。すべての馬で、初めは馬房内休養、続いて引き運動、小さなところへの放牧を4か月間かけて移行した。すべての馬は未出走であった。1頭は調教に復帰、3頭は競走に復帰した。競走復帰までに要した平均期間は329日であった。スタンダードブレッド競走馬において上腕骨の疲労骨折はほとんどない。放射性医薬品取り込み増加のディフューズパターンは上腕骨での報告がこれまでになく、重度なストレスリモデリングを示唆する可能性がある。上腕骨のストレスリモデリングまたは疲労骨折を発症したスタンダードブレッド競走馬は、競走復帰の予後は良好のようである。