育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

スタンダードブレッド競走馬における第三手根骨軟骨下骨透過像(Rossら1989)

第三手根骨のスカイビュー像における骨硬化と透過像について評価した文献。

選ばれた症例は、手根中央関節を原因とする急性跛行を呈したスタンダードブレッド競走馬。

関節鏡視下での評価が行われ、骨折へと進行する病態があることがわかった。必要であれば骨軟骨の掻爬も行う。

長期追跡できた9頭中8頭が競走復帰できたが、もとの水準に達するのは難しい。

 

 

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

13頭のスタンダードブレッドにおいて、第三手根骨の軟骨下骨透過像が、橈側面に単一または複数の領域にみられた。橈側面の骨硬化像も同時にみられた。オス9頭、メス3頭、セン1頭で、年齢は3歳から7歳(平均4.1歳)であった。すべての馬で急性の中程度から重度の、手根中央関節に起因する跛行を認めた。手根骨の背側近位-背側遠位(スカイビュー)像は診断に最も有用で、第三手根骨橈側面の骨硬化像と、軽度な透過像(3頭)、中程度の透過像(6頭)、重度の透過像(4頭)が確認できた。すべての馬で、第三手根骨の透過領域より背側部である辺縁は正常であった。12頭で関節鏡視下での病変部の評価と掻爬術を行った。9頭は長期のモニタリングが可能で、8頭(89%)は競走復帰した。このうちもとの競走レベルに戻ったのは6頭(75%)であった。第三手根骨の軟骨下骨透過像は、慢性的なダメージによって引き起こされ、骨軟骨の崩壊や急性の骨軟骨骨折につながる。