育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

橈側手根骨遠位の軟骨下骨透過像に関連するX線と関節鏡所見(Dabareinerら1996)

腕節構成骨は、激しい運動による軟骨および骨への損傷が蓄積することで骨折が起こります。

しかし、必ずしも大きな骨片骨折や盤状骨折が起きるわけではなく、軟骨や軟骨下骨への損傷がわずかな骨片骨折や軟骨破片となることがあります。

特に橈側手根骨や第三手根骨はそのような損傷による病変が形成されやすく、単純X線では骨片以外に透過性亢進領域が見られることがあります。このような症例では、関節内麻酔でこの部位を原因とする跛行であることを特定し、診断的関節鏡を行うことで病変を確定することができます。

 

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

橈側手根骨遠位の軟骨下骨透過像があり、骨折線が明らかでない症例71頭について、医療記録を回顧的に調査した。すべての馬で腕節に起因する跛行または関節液増量がみられた。橈側手根骨遠位の軟骨下骨透過像は単一の病変または、同時に対側の橈側手根骨遠位に骨折がみられた。病変はX線検査において橈側手根骨遠位背側辺縁の透過像や影として見られ、屈曲位内外および背外掌内斜位像で最も明瞭であった。55頭の64関節が関節鏡手術の対象となった。手術中所見として、44関節で骨軟骨片、17関節で軟骨の破片と軟骨下骨の軟化、3関節で軟骨のささくれがみられた。対面する第三手根骨の病変は18関節でみとめられ、中程度から重度の滑膜炎が24関節でみられた。X線検査でみられる骨片骨折を伴わない手根骨の軟骨下骨透過像は、軟骨および骨の損傷が示唆される。なかには、関節鏡によって小さな骨片(1-2mm大)が軟骨デブリス内に存在したが、X線検査では確認できなかった。追跡調査は、手術した50頭および手術しなかった14頭で得られた。手術した馬の40頭(80%)は競走復帰した。このうち34頭(68%)であり、透過像が単独所見であった26頭中20頭が、術前と同等かそれ以上のレベルに復帰した。手術しなかった14頭のうち、6頭(42%)のみ競走復帰し、元のレベルに戻れたのは2頭(14%)のみであった。X線検査における橈側および中間手根骨の軟骨下骨透過像所見は、軟骨および骨の損傷を示唆しており、これは関節鏡手術が最良の治療方法である。