トウ状骨はトウ嚢とよばれる袋の中に存在し、蹄骨と深屈腱の間に位置しています。アクシデントによる外力や外傷によって骨折がおきることが知られています。
トウ状骨骨折が起きると、中程度から重度の跛行を呈しますが、身体検査では特異的な所見が得られることは多くありません。蹄の熱感、蹄叉の打診痛または鉗圧痛、指動脈の強勢などがみられることがあります。
一方で、トウ状骨の辺縁に発生する小さな骨片も見られることがあります。X線検査ではスカイビュー像が最も診断に優れると考えられますが、骨や他の軟部組織との重なりがあること、辺縁全ての面を観察できないことから限界があります。また、この所見はときどき、臨床症状との関連がないこともあります。したがってより慎重な判断が必要となります。
前回の記事ではトウ状骨辺縁の骨片はナビキュラー症候群でみられるトウ状骨の異常所見と関連してみられることがわかりました。
今回は、トウ状骨遠位の骨片はみられるが、臨床症状の有無と関連する所見はあるのか調査した文献を紹介します。調査対象は、跛行があり診断麻酔と画像診断により診断した症例馬と、購買前検査により偶然見つかった跛行のない馬でした。ナビキュラー症候群と診断した馬の24%に骨片所見が見られ、関連する初見としては最も多いことが示されました。さらに、骨片があり跛行がある馬では、跛行のない馬と比較して、トウ状骨そのものの皮質骨が分厚くなっていることが示されました。このことから、病的な指標である骨のスコアやシスト病変を評価するだけでなく、骨の形状を評価することが重要かもしれないと述べられています。
参考文献
要約
研究を実施した理由
トウ状骨遠位辺縁にみられる骨片の意義はよくわかっていない。トウ状骨の厚みの変化や掌側皮質骨の近位/遠位方向の伸長に関する客観的なデータはない。
目的
トウ状骨遠位辺縁の骨片の分布と、他のトウ状骨のX線検査における他の異常所見との関連を記述すること。蹄に関連する跛行のある馬と健康な馬におけるトウ状骨の形状とナビキュラー病について記述すること。
方法
跛行のない馬のX線検査は、購買前検査の一環として行った。跛行のある馬は、近位種子骨基部レベルでの掌側神経ブロックにより跛行が消失した。診断は局所麻酔とすべての画像検査をもとに前向きに行った。トウ状骨掌側皮質骨の厚みと近位/遠位方向の長さは客観的に測定した。他の異常所見は主観的に評価し、すべてのトウ状骨にグレード分類を行った。
結果
55頭の跛行のない馬と377頭の跛行している馬が組み入れられた。跛行のある馬のほうが、掌側皮質骨の遠位方向の長さを除き、全ての測定項目で大きかった。骨片は跛行のない馬の3.6%、跛行のある馬の8.7%にみられた。ナビキュラー病と診断された馬の24.1%に骨片がみられた。骨片とトウ状骨のグレード、トウ状骨遠位境界部の透過領域および滑液陥入の数と大きさには関連があった。
結論と潜在的関連性
跛行のない馬に比べて、跛行のある馬ではトウ状骨掌側皮質骨の厚みがあった。ナビキュラー病の馬では遠位骨片がもっともよくみられた。トウ状骨の病的な異常を認識するためには、骨の形状の変化を評価することも重要かもしれない。
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