オーストラリア1歳セリで取引された馬の上部内視鏡検査を4年間分調査して、臨床的によく用いられるグレード分類を行った調査です。この分類と競走成績との関連を、オーストラリア国内での競走成績をもとに解析しています。
現在最もよく用いられている分類の一つにHavemeyerの分類があります。この分類はサブグレードを含めて7段階に別れています。
過去の調査などで運動時の喉頭機能との関連が明らかになってきており、プアパフォーマンスとの関連が明らかなのはG3bまたはcおよび4と考えられています。
このような背景からHavemeyerのグレードをより臨床的な影響を反映するために4段階に再編して解析したところ、競走による獲得賞金には有意な差が見られたことが明らかになりました。したがって、G1~2bとG3a~4には出走回数や勝利数には有意な差がないものの、獲得賞金には差があったことが示されました。なお、これらの馬がどのような治療を受けたかまでは把握していません。
参考文献
はじめに
サラブレッド1歳馬の上気道内視鏡検査は、喉頭機能や将来の競走パフォーマンスに与える影響を予測するために一般的に用いられている。本調査の目的は、異なるグレード分類が将来の競走パフォーマンスと関連するか調べることである。
材料と方法
2008〜2011年の4年間にオーストラリアのサラブレッド1歳セリ後の内視鏡画像を得た。記録があってオーストラリアで出走していた馬を組み入れた。動画からHavemeyerおよびLaneのグレードで分類した。オーストラリアにおける競走成績を群間で比較した。
結果
1244頭を組み入れた。群間で性別やセリの価格に差はなかった。どちらのグレード分類においても、群間で出走数および勝利数に差はなかった。Havemeyerのグレードを大別すると、正常と異常、中間(良い)と異常の間で獲得賞金に有意差があった(P=0.02および0.03)。中間(悪い)と異常との間には差はなかった。中間どうしおよび中間と正常にも差がなかった。
*注釈
Havemeyerのグレード分類を再編して考察しています。本来のHavemeyerのグレードは4段階で、G2と3にはそれぞれサブグレードが設定されていて、1,2a,2b,3a,3b,3c,4に分類されます。この筆者らの調査では、これらを再編して、正常、中間(良い)、中間(悪い)、異常に分類しました。それぞれ元のグレードは正常が1,2aに、中間(良い)が2bに、中間(悪い)が3aに、異常が3b,3c,4に対応しています。
考察
オーストラリアのサラブレッド1歳における安静時の喉頭機能をHavemeyerのグレード分類すると、いくらか将来の競走パフォーマンスを予測できた。1歳馬の内視鏡検査を行うときはこのことを考慮すべきである。