安静時の内視鏡検査が、運動時の状態をどの程度診断できているのでしょうか。
実際に運動時内視鏡検査で動的な喉頭虚脱とDDSPを含む軟口蓋機能不全を診断した症例について、安静時の内視鏡所見と動的な上気道疾患との相関を調べた文献について紹介します。
”研究を実施した理由
安静時と高速トレッドミルによる動的内視鏡による喉頭機能の評価をHavemeyerのグレード分類を用いて相関を評価すること。安静時内視鏡でみられる軟口蓋背側変位と運動時の軟口蓋の機能の相関を評価すること。方法
1999-2009年に高速トレッドミル内視鏡検査を行った馬の記録を調査した。安静時および動的内視鏡検査にて喉頭機能および他の異常所見を評価・記録し、それらの相関を評価した。結果
高速トレッドミル内視鏡検査を行ったのは281頭であった。安静時の喉頭グレード(G1-4)と運動時の喉頭機能には有意な相関があり(ρ=0.53、P<0.001)、安静時のサブグレード(3.1、3.2、3.3)は運動時の喉頭機能にも有意な相関を認めた(ρ=0.43、P=0.0017)。運動時に軟口蓋背側変位DDSPを認めた馬では、認めなかった馬よりも安静時内視鏡検査で軟口蓋背側変位を多く認めた(RR=4.1、P<0.001)。安静時内視鏡検査における軟口蓋背側変位は、動的内視鏡における軟口蓋背側変位の診断において感度は25.5%、特異度は95.1%であり、陽性的中率は0.57、陰性的中率は0.83であった。結論と潜在的関連性
本研究の結果より、安静時内視鏡におけるHavemeyerの喉頭グレードは有用であり、過去の研究と同様、安静時と運動時の軟口蓋の異常は相関が認められた。安静時に自然に起きる軟口蓋背側変位を組み入れた軟口蓋背側変位の治療効果調査では、擬陽性が含まれる割合は低いと考えられる