育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

若馬における連続的な内視鏡検査の所見(McGivnyら 2019年)

1歳セリ時のレポジトリー検査で提出されている安静時の内視鏡検査だけでは、その馬の将来の能力や喉頭機能を予測することは難しいです。では実際のところ、運動時の喉頭機能はどうなっているのでしょうか。今回は、若齢馬において連続的に安静時と運動時の内視鏡検査を行って、喉頭機能を評価した文献を紹介します。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

”背景
 最初のオーバーグラウンド内視鏡検査(OGE)における上部気道のグレードや外見は、その後の検査とは異なると仮説を立てた。

目的
 治療を行っていない馬で、同じ運動条件で2回以上OGEを行った馬について、検査結果を比較すること。

研究デザイン
 後ろ向きコホート研究

方法
 同じ運動条件で複数回検査し、運動前および運動中のOGEの記録を回顧的に調査した。また1回目と2回目の検査について、所見を統計学的に評価した。検査間で運動および生理学的パラメータについて、対応のあるウィルコクソンの符号順位検定を用いて評価した。検査間で、上部気道異常のグレードや所見の変化の割合について、Z検定を用いて評価した。それぞれの検査における異常所見を認めた馬の割合をマクネマーの検定を用いて比較した。検査間の信頼性はスピアマンの相関係数を用いて評価し、再現性に与える影響は順次ロジスティック解析を用いて評価した。異常所見のばらつきを見るため、ラティスプロットを作成した。

結果
 78頭の馬(年齢中央値2.4歳)における195回の安静時内視鏡検査、72/78では179回の運動前および運動中のOGEを評価した。検査間隔の中央値は226.5日で、運動および生理学パラメータに有意差はなかった。全ての異常所見において検査間でグレードにばらつきがあり、特に軟口蓋の不安定および安静時の喉頭蓋軟骨のグレードで明らかであった。軟口蓋不安定と安静時の披裂軟骨非対称の所見は、検査間隔と所見のグレード変化に関係がみられた。

主な制限
 より短期間で、一貫した間隔でOGEの再検査を行っていれば、馬における変化をみることができただろう。異常所見と検査間隔の関係を結論付けるには症例数が十分でない。

結論
 1回の検査で治療選択を行う時には、ほとんどの上部気道異常所見はOGE検査によってばらつきがあることを考慮すべきである。また術後に他の上部気道異常が起こる可能性もある。”