喉頭形成術を行ったにもかかわらず、思うようにパフォーマンスが改善しないというケースが存在します。それは上気道疾患の病態が複雑であることが原因です。これまでに紹介してきた文献でも、運動時の内視鏡検査をすると複数の上気道閉塞が併発していることが明らかになってきていて、単独の疾患に対する治療だけでは成績が向上しないことがあります。
そこで今回は、喉頭形成術(いわゆるTie-back)により、披裂軟骨の外転処置を行ったものの、プアパフォーマンスや異常呼吸音が持続した馬について、その原因を調査してまとめた文献を紹介します。この文献で注目すべきポイントは、全ての検査で複数の上気道疾患を併発していたことです。改めて単独の治療法では奏功しないということが明らかになるとともに、運動時内視鏡検査が手術選択に非常に重要であることがわかりました。
”目的
1)喉頭形成術後にプアパフォーマンスを示す馬の運動時の上気道機能を評価すること。
2)術後の安静時内視鏡検査における披裂軟骨外転が、運動時の披裂軟骨の動的虚脱を予期できるか検討すること。研究デザイン
症例集動物
左の喉頭形成術を受けた馬45頭方法
1993年6月から2007年12月の期間で、喉頭形成術後に運動時の異常呼吸音およびプアパフォーマンスを主訴に調査した馬の医療記録を回顧した。安静時および運動時の内視鏡検査動画と、術後の披裂軟骨外転グレードを調査した。手術直後に内視鏡検査を行った記録を調査し、術後の披裂軟骨外転を分類した。安静時の術後披裂軟骨外転と、運動時内視鏡検査の相関を調査した。結果
術後の披裂軟骨外転ができていなかった馬では動的な虚脱をおこす可能性があった。術後の外転グレードが3または4の馬では動的虚脱は予期されなかった。呼吸時のノイズは上気道閉塞と相関があったが、披裂軟骨虚脱に特異的ではなかった。左の声帯が運動時に波打っている馬がほとんどであった。その他の動的な虚脱所見は、右の声帯、披裂喉頭蓋ヒダ、披裂軟骨小角突起、軟口蓋背側変位DDSPおよび咽頭虚脱が認められた。ほとんどの検査で複数の上気道閉塞がみられ、左披裂軟骨の虚脱は全てその他の上気道閉塞を併発していた。結論
術後の披裂軟骨外転グレードが3または4あれば運動時の披裂軟骨虚脱は見られなかったが、術後の外転ができていない場合には動的な虚脱が起こる可能性があった。”