中手骨および中足骨内顆の骨折は、らせん状に近位へ伸びることが多く、スクリューのみでなくプレートも用いた内固定を行うことが多いです。外顆よりも損傷が激しく、予後も悪いと考えられてきました。
今回は、内顆骨折を外科的に治療した馬の術後成績について調査した研究を紹介します。
”目的
第三中手または中足骨の内顆骨折に対し、外科的な治療を行った馬の術後の競走パフォーマンスについて報告すること。研究デザイン
回顧的コホート研究サンプル
内顆骨折を外科的に治療した43頭、うち30頭は既走馬、13頭は未出走馬方法
2009-2017年に治療した骨折症例のシグナルメント、X線所見の特徴、整復方法、術後の病態および死亡を医療記録から調査した。既走馬について、出走歴が最も近いものから症例と合致する馬を2頭ランダムに選択し、健康なコントロールとした。競走パフォーマンスのパラメータは、レースレイティング、競走のレベル、速度のレイティング、パフォーマンス指数とし、生涯の競走統計を、多重回帰モデルを用いて、既走の症例馬と健康な馬で比較した。未出走の馬についても競走統計を評価した。復帰できなかった馬についてはその理由を調査した。結果
追跡調査の期間は2-10年(中央値6年)であった。既走馬では18/30(60%)、未出走馬では3/13(23%)が術後に出走し、全体では21/43(43%)が術後に出走を果たした。既走馬は、未出走馬と比較して5倍復帰する可能性が高かった(95%信頼区間:0.07-0.58、P=0.003)。術前の競走パフォーマンスパラメータが高いことは、競走復帰との関連が認められた。術後の競走パフォーマンスパラメータを、骨折した既走馬と健康な馬で比較すると、骨折した馬で低かった。結論
出走歴のある馬では、内顆骨折の術後復帰率は高かったが、同時期に出走した骨折のない馬に比べるとパフォーマンスは下がってしまった。臨床的意義
馬主は、内顆骨折しても術後競走復帰できる可能性はあるが、パフォーマンスは低くなってしまうことを知っておくべきだ。”